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第20回コーディネーター会合

2019年3月6日
東京 三田共用会議所


集合写真

 2019年3月6日(水)、内閣府・原子力委員会の主催、文部科学省の共催により、第20回FNCAコーディネーター会合が東京において開催されました。FNCA日本コーディネーターである和田智明氏が会合議長を務めました。
  会合には、FNCA参加12ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)の他、オブザーバーとしてRCA地域オフィスから代表が出席しました。
  会合における9つのセッションの結果概要は以下の通りです。

セッション1:開会セッション

 和田FNCA日本コーディネーターの開会宣言に続き、岡芳明原子力委員会委員長が歓迎挨拶を行いました。岡原子力委員会委員長は、昨今原子力科学・技術は産業・医療等の広範な分野で応用されており、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献といった観点で大きな潜在的可能性を有していると述べました。また、FNCAが地域社会経済の持続的発展により有意義に貢献するための活動努力が求められていると述べ、本会合の成功とFNCA活動のさらなる発展を祈願しました。

 続いて参加者が自己紹介を行い、会合プログラムが修正なく承認されました。

(左)和田FNCA日本コーディネーター(中央)岡原子力委員長(右)佐野原子力委員
(左)和田FNCA日本コーディネーター
(中央)岡原子力委員長
(右)佐野原子力委員

セッション2:第19回大臣級会合の概要

 佐藤内閣府大臣官房審議官より、2018年12月に東京において開催された第19回大臣級会合(MLM)の概要が紹介されました。会合では、「アジア農業への放射線技術を利用した貢献」をテーマとして政策討論を行い、今後促進すべきテーマと活動、及び研究成果の普及と実践展開等に言及した共同コミュニケが採択されたことが報告されました。

セッション3:放射線利用開発分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射線育種
     本プロジェクトでは、低投入の持続可能型農業の促進を目指し、アジア各国でニーズの高い作物を対象に、放射線照射による突然変異育種技術を利用することで、気候変動下においても多収で様々な環境耐性を持つ新品種の開発を目指しています。今次会合では、2018年度より開始した「気候変動下における低投入の持続可能型農業に向けた主要作物の突然変異育種」プロジェクトの活動について進捗状況と計画が紹介されました。また、過去に参加各国で開発された新たな突然変異品種/系統について広範な普及が進められており、大きな経済効果をもたらすことが期待されていると報告されました。

  2. 放射線加工・高分子改質
     本プロジェクトは、旧電子加速器利用プロジェクトと旧バイオ肥料プロジェクトが合流し、放射線加工と高分子改質を主要テーマとして本年度より新たに活動を開始しました。本プロジェクトの目的は、工業分野における電子加速器のより広範な利用により、参加国間における情報交換のみならず共同研究を通じた試験データの共有を通じて、参加国において有益な製品の実用化を促進することです。今次会合では、ワークショップにおいて各国の電子線及びガンマ線の応用分野である7つのテーマ(「放射線分解したキトサンの動物飼料応用」、「ハイドロゲルの医療応用」、「環境修復」、「植物生長促進剤、超吸水材、及びバイオ肥料の相乗効果」、「植物生長促進剤及び超吸水材」、「ガンマ線照射によるバイオ肥料の微生物育種」、「ガンマ線照射によるバイオ肥料のキャリア滅菌」)について、グループ討議を行ったこと等が報告されました。

  3. 気候変動科学
     本プロジェクトでは、原子力技術及び同位体を用いた分析を通じ、過去の気候変動の仕組みと過程を理解し、新たな知見を解明するための専門知識共有を目的として2017年に活動を開始しました。今次会合では、気候アーカイブ(湖沼/河川堆積物、サンゴ/貝、洞窟生成物、木の年輪等)及び土壌炭素分析の2テーマに関する活動の進捗について報告がありました。また、ワークショップでは中部ジャワ州のRawa Pening湖において初めてとなる堆積物サンプル採取の現地調査を行ったことが紹介されました。

  4. 放射線治療
     本プロジェクトでは、アジア地域で発生頻度の高いがんに対する最適な治療法の確立と治療成績の向上、またアジア地域における放射線治療の普及を目指して活動を行っています。今次会合では、子宮頸がん、上咽頭がん、乳がんに関する長年の治験により良好な治療成績が得られており、FNCAの治療手順が参加国における標準治療手順になりつつあることが紹介されました。また、ワークショップ初の試みとして、ダッカのユナイテッド病院において3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)の実地研修を実施し、多くの放射線腫瘍医や医学物理士が参加したことが報告されました。

セッション4:研究炉利用開発分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 研究炉利用
     本プロジェクトでは、多様な目的で利用される研究用原子炉について、アジア諸国の研究者間での相互協力を図っています。また、日本の研究炉における経験を基に各国の研究炉に関わる研究者の人材育成に寄与することを目指しています。研究炉利用グループでは、「ホウ素中性子捕捉療法」、「中性子ラジオグラフィ」、「材料研究」等の課題に関する議論結果が報告されました。また、中性子放射化分析グループでは、「大気汚染」及び「鉱物資源」の2つのサブプロジェクト活動に関する進捗と標準試料の分析法の一つとして重視されている中性子放射化分析の能力について報告されました。

セッション5:原子力安全強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射性廃棄物管理
     本プロジェクトでは、原子力/放射線関連施設における放射線安全の確保について知見を共有し、各国の安全レベルの向上を図るとともに、一般公衆の放射線安全確保のために放射性廃棄物の処理・処分方法や環境影響評価について情報共有を行っています。今次会合では、低レベル放射性廃棄物処分場及びパブリック・アクセプタンスに関する各国の現状について情報共有を行い、3年間の活動計画の一つとして「低レベル放射性廃棄物処分場に関する統合化報告書」の作成を進めていること等が報告されました。

セッション6:原子力基盤強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 核セキュリティ・保障措置
     本プロジェクトでは、原子力平和利用の推進において必要となる原子力安全及び核セキュリティ・保障措置の一層の確保について、知識・情報の共有、ならびに人材育成協力の推進等による強化を図っています。今次会合では、1)核セキュリティ(核鑑識、サイバーセキュリティ、核セキュリティ文化、放射線源のセキュリティ)、2)保障措置(追加議定書実施)、ならびに3)核セキュリティ・保障措置分野の人材育成をテーマとして多様な議論が進められていること等が紹介されました。また、活動計画として追加議定書実施に関する良好事例集作成や核鑑識人材育成のための机上演習が紹介されました。

セッション7:RCAとFNCA間の協力に関するRCAからの活動報告

 RCAは、アジア・太平洋地域の加盟国を対象とした原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定に基づき、加盟国間の技術支援協力を行うIAEAの事業であり、FNCA参加国より11ヵ国及び非FNCA参加国11ヵ国(インド、パキスタン、スリランカ等)の22ヵ国が参加しています。今次会合では、ムン・ヘジュRCA地域事務所長が出席し、RCAの概要及びFNCAとRCAの協力状況が紹介された。また、RCAとFNCAの協力が放射線育種、放射線加工・高分子改質、放射線治療の各分野において会合への相互参加と情報共有を中心とした協力を続けていくこと、また、さらなる協力推進に向けて可能性の模索を続けていくことが確認されました。

会合の様子の写真
(右)ムン・ヘジュRCA地域オフィス所長

セッション8:FNCA活動の今後の方針について

 和田FNCA日本コーディネーターより、2019年度の活動計画が提示され合意されました。また、本会合において報告された7プロジェクトの進捗状況、成果及び計画が総括され、補記の上合意されました。

セッション9:閉会

 和田FNCA日本コーディネーターより今次会合の「結論と提言」案が提示され、討議が行われました。


結論と提言(仮訳)


1. コーディネーター会合(CDM)は、FNCAの2018年度に於ける諸活動が効率的に行われ、また参加国にとって有意義な結果をもたらしたことを認め、これを評価する。
2. 第19回大臣級会合の共同コミュニケに示されたFNCAの方向性に沿って、農業、食品安全、環境保全、健康、原子力安全及び人材育成に関連するFNCAの既存活動を促進させることに合意し、またその既存分野に止まらず、持続可能な発展に資する、参加国の幅広い関心を反映した主題を将来的に採択してFNCA活動を一層進めることとした。
3. CDMは、放射線利用開発、研究炉利用開発、原子力安全強化、及び原子力基盤強化の4分野に於いて進められている7プロジェクトの進捗について議論を行った。7プロジェクトとは、放射線育種、農業・環境・医療分野応用のための放射線加工・高分子改質、同位体技術を利用した気候変動科学、放射線治療、研究炉利用、放射線安全・廃棄物管理、及び核セキュリティ・保障措置である。CDMは全てのプロジェクトが参加国間の相互協力によって効率的に進められていることを確認した。それぞれのプロジェクトについてのコメントは以下の通りである。
a) 放射線育種

CDMは、本プロジェクトが本年度スタートした新規フェーズである、"気候変動下における低投入の持続可能型農業に向けた主要作物の突然変異育種"が着実に前進していることを認め、前フェーズで得られたイネの新品種がバングラデシュ、マレーシア、ベトナムで登録され、その栽培が拡大していることを評価する。

b) 農業、環境、医療分野での放射線加工・高分子改質

電子加速器利用とバイオ肥料が統合された本プロジェクトは、以前の2プロジェクトに比較して、その研究対象が拡大し、活動が活性化されたことを認める。また、ベトナムに於ける魚、エビの養殖で照射オリゴキトサンが免疫増強剤および成長促進剤として応用され、さらにバングラデシュに於いては、ハイドロゲルが医療に応用された実績を評価する。

c) 気候変動科学

インドネシアのラワ・ペニン湖に於いて、すべてのプロジェクトリーダー参加の下、湖沼堆積物からの試料採取が実施されたことを評価する。参加国間での原子力および放射性同位体についての技術協力は、湖沼堆積物と土壌有機炭素(SOC)の分析を通じて、気候変動についての参加国の理解を深めることになる。

d) 放射線治療

CDMは、治療プロトコル(CERVIX-V)についての技能実習がバングラデシュの病院に於いて成功裏に行われたことを高く評価する。これにより、将来的にバングラデシュに於いて子宮頸がん患者、幾万人もの生命を救うことが期待できる。また、今年開催予定の中国に於けるワークショップで3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)についての実地研修を再度行う事を推奨する。

e) 研究炉利用

CDMは、新規研究炉計画を検討しているFNCA参加国があるため、研究炉関連の研究者の人材育成に貢献することを目的として、知見の共有をさらに拡大することで、研究炉利用(RRU)プロジェクトの参加国間の協力をより強化することを勧める。また、中性子放射化分析(NAA)については、浮遊粒子状物質(SPM)試料や、希土類元素(REE)含有試料が地域の大気質や国内経済振興に貢献していることを、各国が明示すべきと考える。

f) 放射線安全・廃棄物管理

FNCA参加国の殆どが低レベル放射性廃棄物の処分場や長期保管場の建設を計画していることから、CDMは、低レベル放射性廃棄物処分場に関する報告書を、来年3月を目途にまとめることを提言する。報告書は、安全評価、規制および運用システムの準備、サイト選択、公衆の信頼構築の原則と指針などに関わる重要事項を網羅しているべきである。

g) 核セキュリティ・保障措置

CDMは、同位体比、不純物、粒子形状等の核鑑識データの先進的な測定技術開発の協力体制を参加国間でより拡大すべきと考える。加えて、次回ワークショップに於いては、核鑑識ライブラリを用いて未知試料を解析する机上演習を行う事を提言する。

4. FNCAは、IAEA/RCAと政策担当レベルで交流し、両者の特定プロジェクト、放射線育種、放射線治療、放射線加工・高分子改質、について協力関係を維持し、相乗効果を探ると同時に、FNCA/RCA加盟国以外の国との経験共有を進めることに合意した。また、FNCAが、国連開発計画(UNDP)等の国連関連機関と交流を開始し、これらの機関との協力を通じてSDGs目標を強化することを推奨する。
5. CDMは、2019年度のワークショップがAnnexに示されるホスト国によって開催されることに合意した。それぞれのホスト国に於いて速やかに確認されたい。