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第17回コーディネーター会合

2016年3月8日〜9日
東京 三田共用会議所


集合写真

 2016年3月8日(火)から9日(水)まで、内閣府及び原子力委員会の主催、文部科学省による共催の下、第17回FNCAコーディネーター会合が、東京において開催された。FNCA日本コーディネーターである和田智明氏が会合議長を務めた。
 会合には、FNCA参加12ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)の他、国際原子力機関(IAEA)、RCA地域オフィス、及びOECD/NEAから代表が出席した。

各セッションの内容は以下の通りである。

セッション 1:開会セッション
 岡芳明原子力委員会委員長が歓迎挨拶を行い、その中で、東日本大震災の発生から5周年を前にして、その犠牲者のために参加者に黙とうを呼びかけた。同氏はまた、参加者全員に心からの歓迎の辞を述べ、原子力政策に関する議論と政策策定、及び福島第一原子力発電所事故で得られた教訓の適用を含む、原子力委員会の役割と責任について説明した。さらに、福島第一原子力発電所の廃炉と福島第一原子力発電所事故で被災した地域の復旧が、政府と原子力産業界の課題であると述べた。
 参加者による自己紹介の後、会合プログラム案が、いくつかの修正の後に採択された。
岡原子力委員会委員長 和田コーディネーター
岡原子力委員会委員長 和田FNCA日本コーディネーター(会合議長)

セッション 2:2015年度FNCA大臣級会合報告
 中西宏典内閣府大臣官房審議官が、第16回大臣級会合について、また気候変動に関する新しい研究プロジェクトの発足や、FNCA活動の改善等を盛り込んだ、FNCAの新たな役割に関する共同コミュニケの行動項目について、報告を行った。同氏はまた、各会合の要綱(TOR)作成といった、今後実施すべき取組について説明した。

セッション 3:放射線利用開発プロジェクトの成果報告(第1部)
 辻井博彦プロジェクトリーダーが、放射線治療プロジェクトの子宮頸がんプロトコル研究、CERVIX-IVが優れた成果を上げたこと、また、このプロジェクトが新しくさらに高度なプロトコルである、CERVIX-Vに展開することを報告した。中国のツァオ・ジェンピン氏が、放射線治療が中国で高度化されており、中国においても放射線治療を促進する上でFNCAが非常に重要な役割を演じていることを報告した。
 中井弘和プロジェクトリーダーが、放射線育種プロジェクトにおいて、低投入持続的農業への適応能力に加え、様々な環境ストレスに耐える新しいイネの品種を参加国が開発しつつあることを報告した。モンゴルのバヤルスク・ノーヴ氏が、小麦の新しい突然変異品種の開発成果と、モンゴルにおける放射線育種の将来計画を示した。

4) セッション 4:放射線利用開発プロジェクトの成果報告(第2部)
 鳴海一成氏が、バイオ肥料プロジェクトに関するワークショップの結果を発表した。この中で、バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、及びフィリピンでバイオ肥料のキャリア滅菌のための放射線技術が、バイオ肥料製造会社に移転されたことを報告した。タイのファトチャヤフォン・メウンチャン氏が、農業省(DOA)、タイ原子力技術研究所(TINT)、及びいくつかの民間企業により実施されている、照射キャリアの利用を拡大する試験プロジェクトについて紹介した。
  玉田正男プロジェクトリーダーが、電子加速器利用プロジェクトの参加国における、植物生長促進剤(PGP)と超吸水材(SWA)の開発の進捗状況を発表した。フィリピンのチャリトー・T・アラニラ氏が、イネに対するPGPの効果について予備的な圃場試験を行ったところ、台風や病気に対する抵抗力向上や収量増加のような成果が得られたことを紹介した。


セッション 5:原子力安全強化プロジェクトの成果報告
 小佐古敏荘プロジェクトリーダーは、ワークショップ、「原子力・放射線緊急時計画及び対応に関する統合化報告書」、ニュースレターの発行等、放射線安全・廃棄物管理プロジェクトの成果について報告した。インドネシアのフセン・ザムロニ氏が、経年化した施設の更新や無事故の達成等、インドネシアにおける放射線安全・廃棄物管理の分野での成果を報告した。
 オーストラリアのピーター・マックグリン氏は、ピアレビューが参加国の安全性向上に役立っていることを強調しつつ、バングラデシュにおける前回のピアレビューのフィードバックの結果と共に、ベトナムにおける原子力安全マネジメントシステムプロジェクトのワークショップ開催と、ピアレビューにおける指摘事項について紹介した。ベトナムのグエン・ニー・ディエン氏が、原子力安全マネジメントシステムプロジェクトのピアレビューと定期検査への対応によって達成された、ダラト原子力研究所(DNRI)における安全マネジメントシステムの改良について報告した。

セッション 6:原子力基盤強化プロジェクトの成果報告
 千崎雅生氏プロジェクトリーダーが、核セキュリティ文化醸成における良好事例、核セキュリティに関する機密情報の管理、原子力事業者のための核物質計量管理等を取り上げた、核セキュリティ・保障措置プロジェクトのワークショップについて総括した。カザフスタンのセルゲイ・ベレジン氏が、国際協力、訓練、核セキュリティ文化の普及といった、カザフスタンにおける核セキュリティと保障措置の取組について紹介した。
 飯本武志氏が、人材養成プロジェクトの概要を説明し、将来のワークショップで取り上げるべき具体的なトピックス、すなわち、原子力科学の学校教材に関する情報交換を提案した。バングラデシュのサイード・モハンモド・ホサイン氏が、原子力人材を確保するための自国の取組について報告した。

セッション 7:IAEA/RCAとの協力
  RCA地域オフィス所長のチェ・クンモ氏が、新しい加盟国を考慮し、中期戦略を策定の上、RCA協定の改正に取り組んでいることを紹介した。RCAは、FNCAを戦略的パートナーと位置付けており、今後も協力を継続したいとしている。これに続く議論において、和田コーディネーターが、相乗効果をもたらしうる特定のプロジェクトに関して、FNCAとRCA間の協力を継続する意向を表明した。
チェ・クンモRCA所長 会合の様子
チェ・クンモRCA所長 会合の様子


セッション8:研究炉利用開発プロジェクトの成果報告
 海老原充プロジェクトリーダーが、環境セクター、鉱物資源セクター等、中性子放射化分析のエンドユーザーについて、各国が確認を行ったことを報告し、レアアースの探査と大気中浮遊粒子の分析に焦点を置き、プロジェクトを継続することを提案した。韓国のムン・ジョンファ氏が、韓国における、環境、物質科学、地質学考古学の分野での中性子放射化分析の利用について紹介した。
 神永雅紀プロジェクトリーダーが、研究炉ネットワークプロジェクトのワークショップにおいて、新しい研究炉とMo-99及びその他のRIの製造状況に関する情報交換を継続し、多目的研究炉に関する詳細なカタログを作成することについて、提言が行われたことを紹介した。マレーシアのアザハリ・ビン・カスボラー氏は、マレーシア原子力庁が、自国におけるRI製造の最終目標として、プスパティ研究炉(RTP)により、n-γ法を用いてMo-99を製造する計画を持っていることを述べた。

9) セッション 9:第16回大臣級会合共同コミュニケのフォローアップに関する討議
 セッション9では、第16回大臣級会合の共同コミュニケで決定された行動項目、すなわち、気候変動に関する新しい研究プロジェクトの発足、IAEAやOECD/NEAのような国際組織との協力推進、FNCA活動の改善について、検討が行われた。
 オーストラリアのピーター・マックグリン氏が、過去において環境に何が起こったかをより良く理解するために、湖沼の堆積物、樹木の年輪等の環境サンプルを原子力や同位体の技術で分析することを目指す新しいプロジェクトを提案した。
  OECD/NEAのヒメナ・ヴァスケス・マイグナン氏が、原子力法に関するNEAの活動を紹介した。同氏は、原子力損害賠償の分野で情報と経験を交換するためにFNCAとOECD/NEAの間で協力することを提案した。
 内閣府の室谷展寛氏が、FNCA活動の改善に関する共同コミュニケの行動項目は、活動を再活性化させ、さらなる成果を生み出すことがねらいであると説明した。同氏は、FNCAのプロジェクトとスタディ・パネルの評価について、可視化された新しい方法を提案した。
 また同氏は、プロジェクト活動で優れた成果を達成したプロジェクトチームを称賛するための”FNCA Award”と、その選定プロセスについても提案した。

セッション10:FNCAプロジェクトの今後の活動について
 参加各国は、現フェーズの3年目を迎える放射線育種プロジェクトと、エンドユーザーとの連携確立のために1年間の延長を行った中性子放射化分析プロジェクトについて、講評を述べた。各国は、これらの2つのプロジェクトを継続する意向を表明した。
 FNCAアドバイザーの南波秀樹氏は、放射線育種プロジェクトの成果を総括し、新しいイネの品種が参加国で開発されたこと、または開発されつつあることを考慮して、目標を達成するためにこのプロジェクトを今後2年間継続する価値があると結論付けた。
 和田コーディネーターは、中性子放射化分析プロジェクトが、PM2.5分析とレアアース探探査の分野でエンドユーザーとの連携を確立したことを認識した上で、アジア地域で大きな社会経済的影響を生み出すことを期待して、このプロジェクトをさらに3年間延長すると結論付けた。
 続いて和田コーディネーターが、電子加速器利用プロジェクトとバイオ肥料プロジェクト、及び研究炉ネットワークプロジェクトと中性子放射化分析プロジェクトの合同ワークショップを含む、2016年のFNCAワークショップ開催国の案を提案した。この案は、参加国の都合を確認するため、会合後に参加国に配布することとなった。

セッション11:閉会セッション
 和田コーディネーターが、会合の「結論と提言」案を提示した。「結論と提言」案は、コメントを求めるため、2週間以内に参加国にEメールで送信することが合意された。
 最後に和田コーディネーターが閉会の挨拶を述べ、会合は正式に閉会した。
放医研視察の様子1 放医研視察の様子2
国立研究開発法人放射線医学総合研究所の視察の様子(3月7日)



結論と提言(仮訳)

1. 2015年度のFNCA活動について、参加国に利益をもたらす重要な成果を達成して効果的に実施されたことが高く評価された。
2. 第16回大臣級会合の共同コミュニケで指摘された、気候変動の緩和・適応に対する原子力科学技術の貢献に関して、以下の事項が合意された。
a) 加速器質量分析等の原子力技術を利用した気候変動の研究に関する新規プロジェクトを2017年に発足させるべく計画を立てる。
b) 人材養成と原子力安全といった、原子力基盤に関するプロジェクトやテーマをさらに進展させる。
c) 持続的発展のため、気候変動への適応として寄与しうる、放射線育種プロジェクト等、放射線利用プロジェクトをさらに進展させる。
3. 放射線育種と中性子放射化分析の2つのプロジェクトについて評価を行い、以下のコメント付きでそれらを継続及び延長することが合意された(放射線育種については2年間継続、中性子放射化分析については3年間延長)。
a) 放射線育種
- バングラデシュ、韓国及びベトナムでは新しいイネの品種が開発・登録され、インドネシアとマレーシアでは開発されつつある。
- 市場で受け入れられる新しい品種を得るため、原子力研究機関とエンドユーザーを含む農業セクターの間の協力を強化することが重要である。
- 突然変異品種と植物生長促進剤(PGP)やバイオ肥料の相乗効果を解明するために、他の関係するプロジェクト、すなわち、電子加速器利用及びバイオ肥料プロジェクトとの緊密な協力が必要である。
b) 中性子放射化分析
- 環境監視のためのPM2.5の中性子放射化分析、及び資源探査のためのレアアースの中性子放射化分析は、アジア地域でかなり大きな社会経済的影響を生み出すと期待されている。プロジェクトリーダーは、適切な財政的支援を受けて、3ヵ年計画の終了までに具体的成果を生み出し、潜在的エンドユーザーとの強い連携を築くために最大の努力を払うべきである。
- PM2.5分析の活動は、大気汚染に関するRCAプロジェクトの成果で補完されるべきである。
4. 第16回FNCA大臣級会合の共同コミュニケにおけるFNCA活動の改善計画に合わせて、プロジェクトとスタディ・パネルの評価のための改善案を導入することが合意された。FNCAプロジェクトについては、その発足時と終了時に(継続も含めて)、コーディネーター会合で評価を行う。
a) 提案者が作成するプロジェクト提案書は、プロジェクトの目的、成果、活動、実施体制、及びステークホルダーを含む。
b) プロジェクトは、関連性、有効性、効率、影響及び持続性の点で、FNCAコーディネーター全員により評価を受ける。
スタディ・パネルについては、上級行政官級会合開催時に、提案書の準評価(quasi-evaluation)を行う。
改善案の詳細は添付(ANNEX)1-1から1-7に記載し、これらは上級行政官会合においてさらに議論するほか、次回の上級行政官会合のために再検討する。
5. 放射線治療プロジェクトによって確立した子宮頸がんのためのCERVIX-IVと上咽腔がんのためのNPC-IIIのプロトコルに従い、治療が顕著な業績を生み出したことを評価し、 2016年度より開始するCERVIX-Vの研究を歓迎した。さらに、このプロジェクトで確立したプロトコルが、それぞれの参加国の病院で採用されることも期待している。
6. 原子力安全マネジメントシステムプロジェクトが成功裏に実施されたことを、2015年度にベトナムで行われた、参加国の専門家チームによるピアレビューで認識し、さらに、ベトナム原子力研究所(VINATOM)がピアレビューの助言に従って安全マネジメントシステムを改善したことに注目した。
7. FNCAのほとんどすべての参加国が、低レベル放射性廃棄物処分施設または長期貯蔵施設を建設することを計画しているので、パブリックアクセプタンスのほか、処分施設の安全特性と実際の設計を、放射線安全・廃棄物管理プロジェクトで議論するべきであると提言を行った。
8. 2016年3月31日から4月1日に開催される第4回核セキュリティサミットの新しい行動計画を考慮して、核セキュリティの持続可能な発展のため、さらに進展するFNCA核セキュリティ・保障措置活動の重要性に注目した。
9. 人材養成プロジェクトに関して、参加国が、ワークショップ開催の前に教材を作成し、中学校でそれらを使用した実際の経験について、2016年度のワークショップで報告を行い、関連情報についても交換するよう提言した。
10. FNCAに参加していない RCA参加国との経験の共有と相乗効果の可能性を求めて、放射線育種、放射線治療及び放射線処理に関する特定のプロジェクトにおいて、FNCAがIAEA/RCAと協力を継続するべきであることが合意された。
11. FNCA参加国で重要な問題となりうる原子力損害賠償のような原子力法に関して、OECD/NEAと協力を開始することが合意された。
12. “The Best Research Team of the Year”と”The Excellent Research Team”(FNCA Award)を設けることが合意された。Best Teamの貢献とExcellent Teamの貢献は、その年のすべてのFNCAプロジェクトから選択する。各国コーディネーターがAwardの候補を提案し、上級行政官会合で受賞チームを決める。
13. 2016年度のプロジェクトワークショップについては、添付(ANNEX)2に示した通り、それぞれの参加国政府が開催することが合意された。
効果的かつ効率的な議論と相乗効果を期待して、電子加速器利用プロジェクトとバイオ肥料プロジェクト、及び研究炉ネットワークプロジェクトと中性子放射化分析プロジェクの合同ワークショップをそれぞれ行うこととする。
開催候補国の政府は、可及的速やかにその実施可能性を確認するべきである。
14. コメントを求めるため、改訂されたサマリー報告(案)を、2週間以内に参加国にEメールで送信し、参加国はその後2週間以内にコメントを寄せること、及び、事務局は代表者が承認出来るように報告の最終版を作成することが合意された。