アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
第25回 コーディネーター会合
2025年2月26日
東京 三田共用会議所(オンライン併用)
2025年2月26日(水)、内閣府・原子力委員会の主催、文部科学省の共催により、第25回FNCAコーディネーター会合が東京において開催されました。FNCA日本コーディネーターである玉田正男氏が会合議長を務めました。会合には、FNCA参加13ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の他、RCA地域オフィスからオブザーバーとして代表が出席しました。
会合における9のセッションの結果概要は以下の通りです。
セッション1:開会セッション
玉田議長の開会宣言により開会し、本会合プログラムが承認されました。
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(左)上坂原子力委員会委員長
(右)玉田FNCA日本コーディネーター |
セッション2:第25回大臣級会合の報告
事務局より、2024年12月に日本においてハイブリッド形式で開催された第25回大臣級会合(MLM)の概要が紹介され、「FNCA:これまでの25年と今後の活動」をテーマとした円卓討議、FNCA賞受賞チーム等の表彰、シンガポールのFNCAへの正式加盟が報告されました。
また、FNCA25周年記念行事が、加盟国の協力を得て成功裏に実施されたことが紹介されました。
セッション3:プロジェクト活動の成果報告
- 3−1 今年度の評価について
玉田議長より2024年度プレジェクト活動全般についての評価を個々プロジェクトのフェーズに合わせて行うとの概要説明を行いました。
- 3−2 フェーズ終了プロジェクトの報告と評価
放射線利用開発分野 (放射線加工・高分子改質プロジェクト)
フェーズが終了するプロジェクトの報告と評価が行われました。
本プロジェクトは、農業、環境、医療分野への技術移転促進を目的とし、放射線分解したキトサンの動物飼料応用、ハイドロゲルの医療応用、環境修復、植物生長促進剤、超吸収材及びバイオ肥料の相乗効果、植物生長促進剤及び超吸水材(プロセス開発含む)、放射線による微生物育種、放射線による滅菌及び浄化、リサイクルプラスチックを研究テーマとし開発、実用化等に取り組んできました。本プロジェクトは、エンドユーザーの需要に応える放射線加工技術の高度化を達成しました。
セッション4:既存プロジェクトの活動報告と評価
- 4−1 放射線利用開発分野(放射線育種プロジェクト)
本プロジェクトは、「持続可能型農業に向けた主要作物の突然変異育種と新しい技術の応用」をテーマとして活動をしています。2024年度からは、新しい技術を取り入れることにより、変異体選抜や形質評価の高効率化、重要形質に関わる遺伝子情報の取得などを通じて、従来の放射線育種技術のさらなる発展を目指すこととしています。今次会合では、ワークショップにおいて、各国からの進捗報告、モンゴル植物農業科学研究所(IPAS)の研究施設及び放射線育種の実験フィールドにおけるテクニカルビジットを実施したことが紹介されました。
- 4−2 放射線利用開発分野(食品産地偽装防止プロジェクト)
本プロジェクトは、サプライチェーンにおける食品産地偽装を防止するために、食品産地調査技術プラットフォーム及び主要な重点食品品目のデータベースの構築に向けた研究を行うことを目的としています。2年間の準備期間を経て、第1フェーズが2024年度に始動しました。シドニーにて初めて対面形式で開催されたワークショップにおいて、食品品目の選定、試料収集等に関して参加各国が討議したほか、食品産地偽装の抑止への原子力技術の応用に関するトレーニング及びテクニカルビジット等が実施されました。
- 4−3 放射線利用開発分野(気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクト)
本プロジェクトでは、世界で最も広い気候帯をカバーするアジアの森林土壌において、土壌有機炭素(SOC)中の放射性炭素(C14)を、加速器質量分析(AMS)により評価することで、SOC動態の解明、土壌CO2放出モデル、アジア規模の土壌特性及びCO2放出モデルに関するデータ構築を目指しています。今次会合では、2024年度の成果として、土壌を採取するための実験キットが各国に配付されたこと、広島県でワークショップが開催され、議論やテクニカルビジットが行われるとともに採取の手法が実演されたことなどが共有されました。
- 4−4 放射線利用開発分野(放射線治療プロジェクト)
本プロジェクトは、放射線を用いた標準治療手順(プロトコール)を確立することにより、アジア地域における放射線治療の成績向上と普及を目的としています。アジア地域で罹患率の高いがんである「子宮頸がん」、「上咽頭がん」、「乳がん」に対して最適な治療法を確立したほか、骨転移、脳転移に対する緩和的放射線治療についても最適な治療法を確立するべく現在進行中です。これまでの成果として、各がん種に対する臨床研究の進捗、品質保証/品質管理(QA/QC)監査による加盟国の放射線治療の品質向上、放射線腫瘍医と医学物理士の研修の実施、FNCA によるネットワーク構築等が共有されました。
セッション4:既存プロジェクトの活動報告と評価(続)
- 4−5 研究炉利用開発分野(研究炉利用プロジェクト)
本プロジェクトでは、参加国が保有する研究炉の特徴や利用状況等の情報を共有し、参加国の研究者及び技術者の研究基盤や技術レベルの向上を図っています。ワークショップにおいて、中性子放射化分析グループ(NAA)では、環境モニタリングに焦点を当て、広義での環境試料についてNAAを含めた複数の測定技術を適用し、元素分析を実施したことや、分析手法向上のために共同分析に取り組むことが報告されました。非NAAグループでは、新規放射性同位元素(RI)を含むRI 製造についての議論や、FNCA 参加国の研究炉利用の現状について情報交換等を行ったことが紹介されました。
- 4−6 原子力安全強化分野(放射性安全・廃棄物管理プロジェクト)
本プロジェクトは、情報と経験から得られた知見を交換・共有することにより、参加国の原子力/放射線関連施設における放射線の安全性の向上、及び放射性廃棄物管理活動の充実を図っています。現行フェーズでは、原子力関連施設周辺における環境放射線・放射能をテーマとして、参加国の政府政策と体制、問題などについて情報を収集・検討し、統合化報告書でまとめることを目指しています。ワークショップにおいて環境放射線・放射能に関する国の政策、管理体制、課題等について国別報告と意見交換が行われました。
- 4−7 原子力基盤強化分野(核セキュリティ・保障措置プロジェクト)
本プロジェクトは、核セキュリティ・保障措置について参加各国の認識を高め、情報交換や人材育成、研究開発の推進等を通じて、アジア地域における核セキュリティ・保障措置の強化を図ることを目的としています。現行フェーズにおいては、核セキュリティ分野は核鑑識に係るキャパシティ・ビルディング、RIセキュリティの強化、新たな脅威に対するセキュリティ、保障措置分野は追加議定書(AP)実施、人材育成計画及び資格認定(人材ローテーション)の良好事例をテーマに選択し、ワークショップ等での情報共有を目指すとともに、机上演習やトレーニングも実施していきます。
セッション5:IAEA/RCAの発表
IAEA /RCAの6つのプログラム(農業、ヒューマンヘルス、環境、産業、放射線安全、及びその他)の活動が紹介されました。
セッション6:シンガポール参加希望プロジェクト
シンガポールより、今後活動に参画していくうえで関心のある4つのプロジェクト
(放射線治療、研究炉利用、放射線安全・廃棄物管理、核セキュリティ・保障措置)が発表され、FNCA の活動によって得られる知見やシンガポールの貢献の可能性等が共有されました。
セッション7:新規(継続)プロジェクトの採択
- 日本より、放射線加工・高分子改質プロジェクトの次期フェーズ(2025〜2027年度)への継続が提案されました。次期第8フェーズにおいては、これまで研究されてきた8分野を、「農業用バイオスティミュラント」「環境修復」「医療及び生物学的応用」という3つの研究テーマに再編し、研究開発と新製品の実用化を推進します。
- マレーシアより、原子力に関するPublic Informationが新規プロジェクト(2025〜2027年)として提案されました。本プロジェクトは、加盟国及び地域諸国における原子力を含む原子力技術に対する国民の理解を促進し、原子力の安全性と利益に対する信頼を構築し、国家及び地域のエネルギー戦略への原子力技術の活用を支援することを目的としています。活動資金は参加国からの共同拠出を想定しています。
玉田FNCA日本コーディネーターが、評価ガイドラインに基づき各国コーディネーターによる事前評価の結果および講評を説明しました。@については令和7年度にプロジェクトを開始(継続)することとし、Aについては、計画をより詳細化したうえでの再提案が推奨されたほか、スタディ・パネルでの同テーマ実施もひとつの選択肢であること等が示唆されました。
セッション:8プロジェクト活動総括と今後の活動
8‐1:2024年度プロジェクト活動全般評価報告
玉田コーディネーターが2024年度の活動の総括を行い、各プロジェクトのワークショップ活動について成功裏に実施されたものと評価しました。
8‐2:新規提案(副議長制、FNCA研究開発プラットフォーム(仮)構築)
次年度以降の活動方針に関する新規提案が説明されました。一つ目は副議長制であり、ワークショップの開催国が副議長を選出し、副議長が一部のセッションのファシリテート、サイトビジットの調整等を行うことを提案するもので、各国から反対意見はなく、2025年4月より開始することが合意されました。
二つ目のFNCA研究開発プラットフォーム(仮)構築は、FNCAのこれまでの成果を関係者のみがアクセス可能なネットワークに蓄積することで成果へのアクセスをより促進し、加盟国の連携をより一層深めることを目的とするものであり、各国から反対意見はなく、実施が合意されました。
8‐3:2025年度のプロジェクト計画
2025年度に開催するワークショップの日程及び開催地について、現時点での状況が共有されました。
8‐4:FNCA賞(2024年度分選出プロセス)
2024年12月の第25回大臣級会合にてFNCA賞の表彰が行われたこと、2025年に開催される大臣級会合においても表彰予定であること、その際の受賞者の選定スケジュール、選定方法などを事務局が報告しました。
セッション9:閉会
本会合の決議事項「結論と提言」について、加盟国のコーディネーター等による確認、修正を経て取りまとめられました。
玉田議長による閉会宣言をもって、会合は閉会しました。
結論と提言(仮訳)
- 第25回FNCA大臣級会合(MLM)のFNCAの新たな方向性に関する共同コミュニケに基づき、コーディネーター会合(以下「会合」)は、原子力科学技術分野の価値や原子力安全、セキュリティ文化、持続可能な農業開発、食のセキュリティと安全、環境に配慮した工業開発、気候変動への影響緩和、自然生態系保護などの分野における放射線利用や関連するFNCAプロジェクトの価値を認め、FNCAの主要な役割と活動目的は、加盟国の社会的・経済的充実につながる研究開発、知識と情報の共有、能力の構築であることを再確認し、FNCAの活動をさらに発展させることに合意した。
- フェーズ終了プロジェクト - 放射線利用開発(放射線加工・高分子改質)の報告会合では、フェーズ終了プロジェクトの最終報告が行われた。本プロジェクトは、参加国からの要望を踏まえ、電子線やガンマ線を利用した放射線加工製品、特に高分子改質製品を開発し、地域社会の持続可能性に貢献するため、関連するステークホルダーの協力を得つつ、技術移転を行うことを目的としたものである。主な成果は以下の通り:
- 農業への応用
植物成長促進剤(PGP)、超吸水剤(SWA)、バイオ肥料(BF)などが開発、商品化されている。PGPは農作物の成長のみならず養殖魚の成長にも寄与している。
- 環境への応用
グラフト重合技術により合成された吸着材を用いた金属回収や、電子線照射による大規模廃水処理が実用段階に入っている。
- 医療応用
3次元細胞培養基材の開発、創傷被覆材や止血材の実用化された。ナノ粒子を用いた診断技術の開発などにも進捗が見られた。
- ワークショップ
グループ討議や技術視察を含む対面会合により、効果的かつ効率的な活動を強化。公開セミナーにより、成果を普及させ、放射線技術の社会的受容に貢献した。
- 会合では、現在進行中の以下の7つのプロジェクトについて討議された。
1) 放射線育種プロジェクト
気候変動耐性のある稲の分子育種を開始。FNCAの放射線育種プロジェクトに関する共同研究覚書をメンバー国、量子科学技術研究開発機構・高崎量子応用研究所(QST-高崎)、原子力安全研究協会間で取り交わし、QST-高崎でのイオンビーム照射を促進した。また競争的資金(e-ASIA Joint Research Program, 2025~27)の獲得が決定し、メンバー国間の協力が強化される見込。リモートセンシングやゲノムシーケンシングなどの新技術の導入により、放射線育種の効率化を図り、アジア諸国における新品種開発を加速する。獲得した競争的資金で、追加研究、人材育成、情報交換会などの面でプロジェクトを支援する。
2) 食品産地偽装防止プロジェクト
シドニーで開催された第1回対面会議では、実験室ベースの同位体分析、核分析、および原産地サンプル分析用の携帯用スキャナーの使用訓練を含めた、様々な食品原産地認証技術に関する包括的なトレーニングを実施した。また、サンプル調製手順、免許および許可要件、携帯用XRF使用の安全プロトコール、統計分析、データベース開発、および保管連鎖(Chain of Custody)に関する訓練も実施された。特に、携帯用XRFアプリケーションに関するトレーニングは、このプロジェクトにとって極めて重要な食品原産地推定技術の習熟度を向上させた。サンプルの収集と分析は次回のワークショップまで継続され、そこで得られた分析結果を基にデータベース開発の進捗状況について議論する予定である。
3) 気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクト
土壌サンプリングから分析までを効率的に実施するため、日本から土壌サンプリング、実験実施マニュアル、土壌培養ツール含めたサンプルキットを参加国に提供した。土壌サンプリングの現場を視察することで、参加者は気候変動研究のための環境サンプリング手順の習熟の必要性について理解を深めた。今後、日本に返送された土壌サンプリング試料およびガス試料の加速器質量分析装置(AMS)分析により得られた土壌特性データおよびCO2放出率データをもとに、土壌特性データベースおよびCO2放出モデルのプロトタイプが構築されることが期待される。
4) 放射線治療プロジェクト
放射線がん治療、コンピューターシステムの構築等に不可欠な最適化された線源位置からの患部への照射計画による治療精度の向上に関する論文、治療例をPhysicaMedica誌2024年3月号に掲載し、また参加国と共有した。IAEA/RCAプロジェクト「緩和的治療における放射線治療の標準化」への協力も継続し、情報共有を行っている。脳転移や骨転移に対する緩和的放射線治療には、2022年から様々な条件の放射線治療が適用されている。今後、症例登録や実態調査の進展に伴い、照射プロトコールの標準化が進むことが期待される。
5) 研究炉利用プロジェクト
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)など中性子放射化分析(NAA)以外の分析手法を環境試料に適用し、データの比較・検証、データ処理の最適化を行い、エンドユーザーとの積極的な連携による新規ユーザーの獲得を目指した。ワークショップでは、研究炉の応用を強化するため、参加国の主要な活動であるRI製造に関する情報を共有することができた。今後、2種類のラウンド・ロビン試験(標準試料としての堆積岩粉末、中性子放射化分析において誤差の原因となるウラン含有モナザイト及びゼノタイム粉末に対する総当り分析)を実施することで、測定技術の向上が期待される。RI製造をワークショップの主要な共通トピックとして継続的に取り上げることで、現状の問題点を明らかにしていく。
6) 放射線安全・廃棄物管理プロジェクト
新フェーズ最初のワークショップでは、参加国の環境放射線・放射能に関する対策や課題について情報を共有した。特に、環境放射線・放射能の測定に関して、分析機器の適切な使用やデータ分析技術について、より深い議論が必要であることが明らかになった。原子力施設周辺の環境放射線・放射能に関する統合報告書の素案は、プロジェクト2年目の2025年度に作成される予定である。
7) 核セキュリティ・保障措置プロジェクト
ワークショップでは、核セキュリティ及び保障措置に関する課題や良好事例が共有され、参加国の核セキュリティに対する意識がさらに高まった。放射性物質のセキュリティに関わるステークホルダーの特定、放射性物質を使用する施設とセキュリティ当局との調整に関する机上演習の実施を通じて、人材育成が促進された。AI、コンピュータ・サイバーセキュリティ、インサイダー脅威の緩和といった新たな脅威に対する理解を深め、良好事例を共有することで、核セキュリティ文化のさらなる醸成が期待される。補完的アクセス、核鑑識、緊急時対応、輸出管理に関連する机上演習を通じて、能力構築が期待できる。
- 会合では、IAEA/RCAROからRCAの概要と最近の活発なプログラムについて報告があった。RCAROはまた、共同シンポジウムや共同研究プロジェクトなどの協力のためのアイデアも提示した。参加者は提示されたアイデアについて議論・意見交換した。
- 第25回閣僚級会合(MLM)において、シンガポールの新規加盟が承認され、シンガポールは初めて加盟国として会合に参加した。シンガポールは4つのプロジェクトに参加することに関心を示し、シンガポール側から貢献の可能性や実施予定機関について素案が提示された。シンガポールはできるだけ早く、できれば今年から、ワークショップなどのプロジェクト会合に参加するよう奨励された。加盟国は、新しい加盟国が新しいアイデアをもたらし、プロジェクトがより活発になることを期待している。また、会合ではシンガポールに、他のプロジェクトの参加可能性についても検討するよう推奨された。
- 第17回MLMで承認されたプロジェクト提案の改善された評価手順に従い、FNCAコーディネーター全員が、新たに提案された2つのプロジェクトについて、関連性、有効性、効率性、効果、持続可能性の観点から事前評価を行った。評価結果の要点が整理され、以下のようにまとめられた。
1) 放射線加工・高分子改質プロジェクト(継続案件、日本)- 8分野を新たに3分野に再編し、活動を進める。応用の方向性を明確にすることで、新製品の研究開発と実用化を促進することが期待される。
- 実用化は、参加国のニーズに合わせた研究開発、各分野の多様なステークホルダーとの連携により推進できる。その成果は社会経済的利益や持続可能性に貢献する。
- ほとんど全ての国で高得点を獲得し、参加に関心を示している。
2) 「 原子力」に関するPublic Information(新規案件、マレーシア)
- いくつかの評価項目は低得点であった。
- 数カ国が強い関心を示し、提案されたテーマの重要性を指摘。しかし、原子力技術開発に関わる多様なニーズを満たすための様々な地域戦略があり、プロジェクトを開始する前に、より具体的な計画が必要である。プロジェクトを開始する前に、具体的な計画、明確な目標と期待される成果、期待されるステークホルダーなどをより詳細に検討する必要性が示唆された。
- プロジェクト活動には、参加メンバー国からの共同拠出による資金か、または、オンラインで実施されることになる。しかし、オンライン会議は対面での議論ほど効率的でないという懸念が指摘された。
- 新規プロジェクトの採択(継続を含む)
1) 放射線加工・高分子改質プロジェクト(継続案件、日本)
新たに提案された継続プロジェクトは、異議なく採択された。どの評価基準においても「低得点」はなく、プロジェクトの予算措置も日本が支援するものであった。
2) 「原子力」に関するPublic Information(新規案件、マレーシア)
新規プロジェクトには「低」と評価されるスコアがいくつかある。しかし、複数の国から強い関心が示された。このため、提案者には、事前評価での様々なコメントを見直し、研究プロジェクトとしての確固とした資金調達と明確な実現可能性を念頭に、次回CDMでの再提出に向け提案を磨き上げるよう強く推奨された。本テーマの重要性はメンバー国間で共有され、Study Pannelのテーマとして取り上げるなど、他の様々な方法も検討された。
- 2024年度FNCAプロジェクト活動全般評価
この1年間のワークショップの主な活動について、以下のような所見や建設的な意見が寄せられた:- ほとんどのプロジェクトが、オンラインと組み合わせた対面式のワークショップを開催した。このようなワークショップはで活発な議論や情報交換が実現できた。しかし、技術視察、実地研修、机上演習などの重要な活動に参加できたのは、対面参加した参加者のみであった。
- オンラインの参加者にとっては、発言のタイミングが難しく、双方向の討議を円滑に行うことが難しいという意見があった。各プロジェクトリーダーと参加者は、ワークショップに対面出席し、一層活発な議論が行われることを期待したい。
- 日本の次期プロジェクトリーダーとなるサブプロジェクトリーダーは、2024年度に新FNCAマネジメントとして任命され、2025年度からワークショップに参加する予定である。
- あるプロジェクトでは、ワークショップの期間は3日間あったが、2日間のみで成果と今後の計画について話し合われた。議論は非常に効率的に進められたが、実際には十分な議論ができなかったという意見があり、ワークショップの期間をあと1日延長してほしいという要望があった。ワークショップの開催期間の最適化については、随時検討していく。
- 新たなマネジメント提案
FNCAプロジェクト活動をさらに充実させるため、2つの運営上の提案が示された。
1) 各プロジェクトにおける副議長の提案
各FNCAメンバー国でのワークショップの指導力強化のため、ワークショップセッションでの調整役、オープンセミナーのアレンジ、現地視察、外部プレス対応、議事録のまとめ等の役割を担う副議長を任命する。副議長は原則として各プロジェクト開催国のプロジェクトリーダーが務める。この枠組みは2025年4月からスタートする。副議長の導入や具体的な運営方法は、プロジェクトごとに決定する。
2) FNCA研究開発プラットフォームの提案
FNCAは2024年に設立25周年を迎え、マニュアル・ガイドライン、ワークショップで発表されたカントリーレポート、学術論文、成功事例、出版物、研究データ、オープンセミナーのビデオなど数多くの成果を蓄積してきた。しかし、これらの膨大なデータはFNCA関係者が簡単にアクセスできるものではなく、有効活用されていないのが現状である。本提案は、アジア各国の原子力・放射線技術の発展に貢献するため、FNCA各国からの参加者がその成果に容易にアクセスできる「プラットフォーム」を開発するものである。このような使い勝手の良いプラットフォームは、2025年大臣級会合での予備調査・提案により予算が得られれば、2026年から開発する予定である。
- 2025年度のワークショップ・スケジュール
会合では、2025年度に8つのプロジェクトに関するワークショップが以下の通り開催される予定であること、各開催国は速やかに準備を進めることが確認された。ワークショップは、参加者全員が技術視察、実地研修、実地演習などの重要な活動に参加できるよう、対面式で実施することが奨励される。
- 事務局より、研究者の奨励を目的として、2024年度中に実施された研究に対して研究チームを表彰するFNCA賞の継続が提案され、了承された。また、事務局より、次回の大臣級会合で授賞式を行う予定である旨、選考方法とスケジュールが説明され、了承された。
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