FNCA


FNCA Coordinators

image

コーディネーター紹介

コーディネーター会合
第11回
概要
アジェンダ
参加者リスト
第23回
第22回
第21回
第20回
第19回
第18回
第17回
第16回
第15回
第14回
第13回
第12回
第11回
第10回
第9回
第8回
第7回
第6回
第5回
第4回
第3回
第2回
第1回


第11回 コーディネーター会合

2010年3月11日〜12日、東京 三田共用会議所



 平成22年3月11日から12日まで、内閣府、原子力委員会、文部科学省の主催による第11回FNCAコーディネーター会合が東京(三田共用会議所)において開催された。参加10ヵ国(オ−ストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレ−シア、フィリピン、タイ、ベトナム)からFNCAコーディネーターと専門家が出席した。また、IAEA技術協力局、RCA地域事務所代表(韓国)、カザフスタン及びモンゴルがオブザーバーとして出席した。我が国からは、町FNCA日本コーディネーターのほか、近藤原子力委員会委員長、鈴木委員長代理、秋庭委員、大庭委員、尾本委員及び関係省庁(内閣府、文部科学省、外務省)の行政官等が参加した。

 以下に会合の結果概要を報告する。主な決定を述べた部分には下線を付した。

1. セッション1:開会セッション

 町コーディネーターの議長挨拶に続いて近藤委員長が歓迎挨拶を行った。近藤委員長は、主催者代表としてオブザーバーを含む全参加者に歓迎の意を表すとともに、FNCAの主要な活動であるプロジェクトの推進について長期的視野に立った方針を提示するコーディネーター会合の果たす重要な役割を強調した。また、第10回大臣級会合で取上げられた、原子力施設に対する自然災害のリスク管理や原子力発電推進のための国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下のクレジットメカニズム等の項目について参加者の十分な検討を期待すると述べた。

2. セッション2:第10回FNCA大臣級会合報告

 昨年12月に東京で開催された第10回FNCA大臣級会合(議長:菅直人副総理兼内閣府特命担当大臣(科学技術政策)(当時))について、町コーディネーターから報告があり、同会合で採択された決議と会合サマリ−の内容、プロジェクトやパネル会合に関する活動報告の状況等が紹介された。質疑の中では、放射性廃棄物の取扱いや後出の原子力発電をCDMに加えることの重要性に触れる発言があった。また、原子力発電に必要な資金問題の解決のためには世界銀行やアジア開発銀行等にアプローチすることが重要との指摘もあった。

3. セッション3:各プロジェクトのレビュー

 下記の8分野11プロジェクトについて、活動報告及び今後の計画について議論が行われた。なお、放射線育種のランは、今年度で活動の計画が最終年度となるため、今次会合で継続の是非等今後の進め方に関する評価を受けた。

(1) 研究炉利用(@研究炉基盤技術、A中性子放射化分析)
(2) 農業利用 (B放射線育種(ラン、バナナ、イネ)、Cバイオ肥料)
(3) 医学利用 (D医療用PET・サイクロトロン、E放射線治療)
(4) 工業利用 (F電子加速器(天然高分子の放射線処理))
(5) 原子力広報(G原子力広報)
(6) 人材養成 (H人材養成)
(7) 原子力安全マネジメントシステム(I原子力安全マネジメントシステム)
(8) 放射線安全・廃棄物管理(J放射線安全・廃棄物管理)
 
(1) 研究炉利用
 
@ 研究炉基盤技術プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
本プロジェクトは、研究炉の安全かつ安定的な運転をさらに進め、効率的に研究炉を利用する基盤を強化するため、炉心管理に関する核計算技術の向上を目指しており、プロジェクトの中で共有している中性炉解析用標準コ−ド(SRAC)又は連続エネルギーモンテカルロコード(MVP)を、RI製造や宝石用原石の照射などに用いる研究炉の解析に利用している。
今次会合では、JAEAが開発した安全解析コ−ドである「COOLOD−N2」を各国の研究炉に適用し、解析結果と実験結果の比較を行った結果について報告された。また、反応度付加や冷却材喪失等の仮想事故によって生じる過渡状態を解析する「EUREKA2/RR」についても、各国の炉に適用するためのプログラムインスト−ルが完了したことが報告された。
2010年度には各国の炉でEUREKA2/RRによる解析を実施し、結果を最終レポ−トにまとめる予定である。
 
A 中性子放射化分析プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
中性子放射化分析(NAA)は、分析対象物(試科)に中性子照射して構成元素を放射化させ、その放射能およびエネルギ−を測定して元素分析を行う手法であり、試料の化学組成を高感度で分析することが可能である。2008年度より第3期フェーズがスタートし、環境試料に加えて食品試料と地球化学試料(資源探査)を分析対象として進めてきた。
今次会合では、地球化学試料、食品試料及び環境試料の3つについて、2009年9月7日〜11日に八戸(日本)で行われたワ−クショップと各国での活動概要について報告がなされた。また、フィリピン及びバングラデシュから地球化学試料(資源探査)サブ・プロジェクトへの参加希望があり、2010年度から参加することになった。
 
(2) 農業利用
 
B 放射線育種プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2007年度〜2011年度)
本プロジェクトは、放射線照射による作物の品種改良によって耐病性、耐虫害性、耐旱魃性などのすぐれた品種を作り出し、アジア地域における食糧増産に貢献することを目的としたプロジェクト。現在「ランの耐虫性」、「バナナの耐病性」、「イネの成分改変/品質改良」(昨年度より開始)の3テ−マを実施している。
今次会合では、2009年9月21日〜24日に杭州(中国)で開催されたワ−クショップの結果等の報告がなされた。「ランの耐虫性育種」サブプロジェクトは、害虫への耐性に優れたランの変異品種がイオンビ−ム照射によりマレ−シアにおいて開発され、新品種として成功裏に登録が行われたのち商品化される予定であり、2009年度で終了する。「イネの成分改変/品質改良」のサブプロジェクトについては、でんぷんやたんぱく質の含有量の評価方法について統一的な基準を作成した。
「バナナの耐病性育種」のサブプロジェクトについては、フィリピンにおいてBBTV(Banana Bunchy Top Virus)耐病性に優れた変異品種が開発されたことがダマスコス女史(フィリピン・プロジェクトリーダー)から報告された。成果は実用化されつつあり、小規模バナナ農家に大きな利益をもたらす見込みである。
 
C バイオ肥料プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2007年度〜2011年度)
本プロジェクトは、根粒菌等を用いたバイオ肥料技術を改良し普及させることにより、アジア地域における食糧生産を増加させるとともに、化学肥料の使用を減らし環境と土壌の保全を図り、持続可能な農業を促進させることを目指したプロジェクト。具体的には放射線照射によりバイオ肥料作成に必要なキャリア(担体)の滅菌を行なうことにより、高品質のバイオ肥料を製造する。
今次会合では、窒素やリン等の複数有用成分に効果のある多機能バイオ肥料の開発、熱帯等高温地域で有用な45℃まで耐熱性を高めた菌種の開発等が報告された。また、マレ−シア、インドネシア及びフィリピンにおけるCo−60で滅菌したキャリアの使用実績が報告された。キャリアの放射線滅菌の一層の実用化が今後に向けての課題である。
また、バイオ肥料の利用に最も積極的に取組んでいる国の一つであるインドネシアの状況について、アナス氏(インドネシア、プロジェクトリーダー)から報告があった。バイオ肥料を用いることで化学肥料の使用量を少なくすることができ、環境にも良いとの話があった。
質疑の中で、コーディネーターがバイオ肥料事業者と放射線照射施設の協力を促進することが推奨された。
 
(3) 医学利用
 
D 医療用PET・サイクロトロンプロジェクト(マレ−シアがホスト国を務める)(2009年度〜2010年度)
本プロジェクトは、先進技術を用いたがんなどの病気の早期発見、早期治療によるアジアの人々の健康増進を目的とし、核医学診断技術の向上と普及を目指し、医療用PET(陽電子放出断層撮像装置)及びサイクロトロン(医薬品用放射性核種を製造する加速器)について技術向上のための活動を行っている。
今次会合では、マレ−シアのユナス氏から、これまでに104症例にのぼるATLAS(症例集)向けデ−タが集まったこと、2010年度はさらに各国10例ずつ(計100例)を集める予定であることが報告された。また、IAEAが現在PET/CTに関する技術図書(Technical Document)を作成中であり、既存のFNCAガイドラインについて整合性をとっていく方針が示された。
我が国からも遠藤氏(群馬大)が症例写真を示しながらPET/CTの有用性について説明した。2010年時点で、FNCA全体でのPET向けサイクロトロン設備は229、PETセンタ−は495ヶ所あり、急速に増えている。
2010年度以降のプロジェクト運営について、経済状況がきびしいことから、マレ−シアが費用負担できるかどうか不透明であるとのコメントがあった。費用負担が困難となった場合の対応については今後検討する。
 
E 放射線治療プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
本プロジェクトは、アジア地域で患者が多い子宮頚(しきゅうけい)がんや上喉頭(じょういんとう)がんを対象とし、各国共通の治療手順を決め、その治療効果を比較しながら、アジア地域の標準となる治療方法の確立を目指している。
今次会合では、子宮頚がんと上喉頭がんの新たな治療手順による予後経過の改善が定量的に示された。また、過剰照射による被ばくを防ぐ観点から各国の照射施設や放射線防護管理を調査した結果が報告された。今後もこれらの活動を継続するとともに、治療手順(プロトコル)に関する成果をアジア諸国に広く広める予定である。
 
(4) 工業利用
 
F 電子加速器(天然高分子の放射線処理)プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2009年度〜2011年度)
本プロジェクトは、適用範囲が広く安全性に優れた低エネルギ−の電子加速器による照射システムを開発し、電子加速器のより広範な利用を促進することを目的としたプロジェクト。現在の第3フェ−ズ(2009年度−2011年度)では、「放射線加工による天然高分子の農業利用」をテ−マに天然高分子由来の高吸水性ゲルの土壌改良剤の研究や植物成長促進剤のフィ−ルド試験及びコスト評価等を行っている。また、2007年以来、IAEA/RCAと連携して、研究者の相互出席やガイドライン作成を含むプロジェクト協力を進めている。
今次会合では、カニやエビの殻から得られるキトサンの放射線照射により作製された植物成長促進剤(オリゴ・キトサン)について、ベトナム、インドネシア、日本及びタイで行われたフィ−ルドテストが非常に良い結果であったことが報告された。また、でんぷんを照射して作製した超吸水剤についてもタイ及びベトナムでフィ−ルドテストを実施中である。植物成長促進剤のさらなる利用拡大と超吸水剤のフィ−ルドテスト拡大のために、各国のプロジェクトリーダーと農家を含む農業部門のとの間の相互協力をさらに強化するようコメントがあり、了解された。
 
(5) 原子力広報
 
G 原子力広報プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
本プロジェクトは原子力の平和利用は国民の理解の下に進めていくことが必要であるとの認識の下、アジア各国との情報交換を行いつつ、各国の特徴を取り入れたより効果的な広報活動戦略の確立を目指したプロジェクト。一般市民を対象とした放射線・原子力に関する世論調査、IAEAとの共催による広報担当者訓練活動、参加各国が作成する広報素材(DVD、ポスタ−、パンフレット)のレビューなどを実施している。
今次会合では、2009年12月7日〜11日にマニラ(フィリピン)で開催されたプロジェクトリーダー会合の結果や、2010年度に実施予定の「原子力エネルギ−に関する世論調査(Public Opinion Survey on Nuclear Energy)」に向けた予備調査結果について報告がなされた。後者については、調査要領や質問内容の適切さが確かめられたことから、本調査を2010年度にメンバ−各国内で実施することについて了承された。
 
(6) 人材養成
 
H 人材養成プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
本プロジェクトはアジア地域の原子力科学技術分野の人材養成におけるニ−ズの把握、情報交換や調査、地域内での協力のあり方の検討等を通じて、同地域内の人材育成・交流の促進により原子力技術基盤の強化に役立てることを目的としたプロジェクト。2006年からアジア各国の人材養成計画をより効果的に進めるため、各国で必要とされる人材養成のニ−ズと提供可能なプログラムのマッチングを行う「アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)」を実施している(最新のマッチングの状況はANTEPウェブサイトで公開中)。
今次会合では、2009年6月22日〜25日に敦賀(日本)で開催されたワ−クショップの結果について報告があった。人材養成プロジェクトの課題は、急増する原子力発電向け人材の需要にどう応えるかであり、この問題に対する戦略的な議論のために2010年のワ−クショップに人材養成を担当する行政官を招聘することが提案され、承認された。

町コーディネーターから、我が国の文部科学省が、経済産業省、原子力産業協会、各企業、及び原子力学会と協力して「グロ−バル原子力人材育成イニシアティブ」を立ち上げようとしているとの紹介があった。
 
(7) 原子力安全マネジメントシステム
 
I 原子力安全マネジメントシステムプロジェクト(オ−ストラリアがホスト国を務める)(2009年度〜2014年度)
本プロジェクトは、原子力安全文化プロジェクトが2008年度で終了したことを受けて、2009年度より新たに立上げられた。今後、独自のピアレビューツールを作成し、参加各国の研究炉においてピアレビュ−を実施する予定である。
今次会合では、2009年7月のプロジェクト立上げ前後の経緯と2010年2月にシドニ−(オ−ストラリア)で開催した第1回ワ−クショップの結果について報告された。本プロジェクトの主な活動は、ピアレビュ−と結びつけたワ−クショップの開催と安全マネジメントシステムの自己アセスメントであり、第1回目は2010年10月にインドネシアで行いたいとの希望が述べられ、了承された。他の国として、タイ、ベトナム及び中国も自己アセスメントとピアレビュ−に興味を示した。自己アセスメントとピアレビューのためのツールはオーストラリアがドラフトを作成済とのことである。
 
(8) 放射線安全・廃棄物管理
 
J 放射線安全・廃棄物管理プロジェクト(日本がホスト国を務める)(2008年度〜2010年度)
本プロジェクトは、FNCA参加国間において放射線安全および放射性廃棄物に関する情報や経験により得られた知見を交換し共有することにより、アジア地域における放射線および放射性廃棄物の取り扱いに関する安全性の向上を図ることを目的としている。放射線の利用は各国において産業、農業、医療など様々な分野で急速に進んでおり、また、原子力発電所の導入の検討も盛んに行われていることから、個人線量計の校正、標準化および適切な被ばく管理等に焦点を当てた議論を行っている。
今次会合では、2009年8月3日〜7日にハノイ(ベトナム)で開催されたワ−クショップの結果が報告された。ワ−クショップでは、放射線計測の標準化及び発電所建設に向けた準備をテ−マとしたオ−プンセミナ−を実施した他、円卓討議やミニ展示会等が実施された。
質疑の中で、本プロジェクトは安全マネジメントシステム・プロジェクトと内容が近いので、両者間でよく調整すべきとの意見が出された。

4. セッション4:IAEA/RCAの活動状況紹介

 RCAは、アジア・太平洋地域の加盟国を対象とした原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定に基づく、加盟国間の技術支援協力を行なうIAEAの事業であり、FNCA参加国に加え、インド、パキスタン、スリランカ等が参加している枠組み。IAEA本部及び韓国にある地域事務所がその推進を担っている。

 近年、FNCAとRCAとの協力について推進すべく、各代表が相手側の会合(FNCAコーディネーター会合及びRCA政府代表者会合)に出席し、今後の協力について意見交換を行なっている。今回、IAEA本部よりアジア太平洋課課長のモクダッド・マクソーディ氏、RCA地域事務所よりイ・ムンキ所長が本会合に出席した。

(1) IAEAのアジア地域における活動
マクソ−ディ氏から、IAEAのアジア太平洋地域における技術協力プログラム(TCAP)に関する説明が行われた。TCAPにはアジア太平洋地域の30カ国が参加し、予算規模は34MUS$、RCA(東アジア)とARASIA(西アジア)の2つの枠組等の下で約400のプロジェクトが行われている(いずれも2009年)。また、その対象は、エネルギ−計画、原子力発電、保健医療、農業及び食料、飲料水、産業応用、環境保護など多岐にわたる。
IAEAがこれから力を入れていく項目として、ウィン−ウィン(Win-Win)関係を作れるパートナーシップの構築、品質マネジメント、男女共同参画、地域協力、各国施設の有効活用等が挙げられた。
 
(2) RCAの活動
イ・ムンキ氏から、RCAの2009〜2011年の活動実績と計画が報告された。農業、健康、環境、工業、放射線防護を主要なテ−マとした15のプロジェクトが現在進行中である。FNCAとRCAは、天然高分子の放射線加工、放射線治療及び放射線育種の分野において情報交換を中心に協力を行っており、これからも協力活動を推進していく。
 

マクソーディ氏(IAEA)

イ・ムンキ氏(RCA)

山本氏(JAEA

5. セッション5:原子力発電向け人材養成データベース状況報告

 2007年の第8回大臣級会合で承認され、昨年4月より運用を開始した原子力発電向け人材養成データベース構築に関して、運用事務局を担当している日本原子力研究開発機構(JAEA)山本氏から進捗報告が行われた。現在、約1年が経過したところであるが、この間にデータベースユーザーが選定及び登録され、さらなる改善と情報収集を継続中である。データベースをより効果的なものにするために、FNCAメンバ−国に対してさらに原子力発電向け人材養成の情報を提供するよう求め、了解された。

6. セッション6:プロジェクト2009年度成果評価と2010年度活動計画

 町コーディネーターより、8分野11プロジェクトのレビュー結果と、文部科学省のアジア諸国における原子力協力プログラムの現状及び新たな取り組みの紹介が行われた。
 今年度末で計画期間満了となる放射線育種プロジェクトのラン・サブプロジェクトについては、耐虫性の変異株が得られたため、期間延長せずに今年度で終了することとし、他のプロジェクト/サブプロジェクトについては活動を継続することで承認された。
 文部科学省の新たな取り組みとして、人材養成プロジェクトの中で、核不拡散や保障措置、核セキュリティのための人材養成についてもテ−マに加え、情報交換を行うこと、保障措置のエキスパ−ト派遣を実施すること、日本の産官学が連携してアジア諸国の学生・若手研究者向けの人材育成事業(国際原子力人材イニシアティブ)を立ち上げることを紹介し、各国より歓迎の意が示された。なお、イニシアティブの具体的な内容については、4月以降固まり次第、別途案内することとした。

7. 特別セッション:カザフスタン及びモンゴルの活動紹介

(1) カザフスタンの活動紹介
カザフスタン国立原子力センター第一副総裁のバティルベコフ氏から、カザフスタンにおける原子力科学技術のための組織、政策、各種プログラム等が紹介された。また、各原子力関連施設の概要が写真と共に示された。カザフスタンは原子力発電所建設を2基導入する計画を有しており、また、将来的に水素を製造するために、日本原子力研究開発機構と協力して高温ガス冷却炉(HTGCR)の研究開発の計画を進めている。原子力科学技術によるフィルムコ−ティングや、薄箔製造、照射による高分子ハイドロゲル製造と、コバルト−60、イリジウム−192、パラジウム−103を含むアイソト−プの製造も行われている。ウラン資源が豊富であり、今後も生産量は増加していくだろうとバティルベコフ氏は述べた。
 
(2) モンゴルの活動紹介
モンゴル原子力庁原子力技術部長マンジャイラフ氏から、モンゴルにおけるウラン資源の開発状況、原子力庁の概要、及び原子力政策について紹介が行われた。ウランの輸出はモンゴルにとって重要なビジネスであり、原子力発電に関しては導入可能性を検討している段階である。また、原子力科学技術の農業や医療分野への適用も重要なプログラムであると報告された。
 

バティルベコフ氏(カザフスタン)

マンジャイラフ氏(モンゴル)

8. セッション7:原子力発電の基盤整備に関する検討パネル(第1回パネル会合報告及び第2回計画)

 我が国から尾本原子力委員会委員がリードスピーチを行い、第1回会合において原子力発電導入初期における経験や知見がメンバ−国間で共有された成果を示すと共に、第2回会合のテ−マとして「プロジェクトマネジメント」、「現地産業と機材調達」、「地域協力」等を提案した。次にスピーチを行った韓国原子力研究院(KAERI)のリム・チェヨン氏は、尾本委員の提案テ−マに賛同するとともに日時や場所の提案を行った。2つのスピーチを踏まえ、各国間で第2回会合について、2010年7月1日−2日の日程で日本(内閣府、原子力委員会)と韓国(教育科学技術省)の共催によりソウル(韓国)で開催し、プロジェクトマネジメント、現地産業と機材調達、地域協力等について検討することが合意された。
 現時点ですべての新規導入メンバー国がIAEA定義のフェ−ズ1又はその前段階にあることを踏まえ、フェ−ズ2(サイト選定、許認可)やフェ−ズ3(建設)の基盤整備は時期尚早と判断し、パネルの検討内容を変更することが合意された。
 マレ−シアから、基盤整備は「短期」「中期」「長期」で行うべきものを区別して考える必要があるとのコメントがあった。
 また、人材養成については、我が国の新たな取組である「グロ−バル原子力人材育成イニシアティブ」の中で対応していきたい旨を我が国から説明した。


尾本原子力委員

リム・チェヨン氏(KAERI)

本橋氏(JNES)

9. セッション8:第10回大臣級会合のフォロ−アップ項目に関する討議

(1) 自然災害対策(地震、津波、火山噴火等)に関する情報共有の進め方
原子力安全基盤機構(JNES)耐震安全部の本橋次長より、原子力施設建設のための耐震安全研究の現状課題と題して、2006年の耐震基準改訂、2007年の中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所の影響、2009年12月の柏崎耐震安全センタ−の開設、本年2月に柏崎で行われたアジア地域耐震セミナ−の結果や3月のワ−クショップ予定等が紹介された。津波対策についてもIAEAの特別拠出金プログラムの下の取組みについて紹介があった。
討議では、上記ワ−クショップに参加したい(バングラデシュ)、日本の例は大変参考になる(インドネシア)等の積極的な発言があった。また、先の大臣会合で話題となった火山対策について近藤委員長からリマインドがあり、本橋氏が我が国では確率的な評価をしていること、IAEAが基準作成作業を現在行っておりこれに協力していくことを回答した。フィリピンからはIAEA下のアジア原子力安全ネットワ−ク(ANSN)で地震や津波対策を考慮したサイト選定のトピカルグル−プが新設されたことの指摘があり、町コーディネーターがIAEAのプログラムを注意深く検討する必要があるとコメントした。
 
(2) CDMケ−ススタディ成果活用を含む今後のUNFCCC/COP作業会合等への働きかけの進め方について
町コーディネーターより、CDMケ−ススタディのフォロ−アップ及びUNFCCC/COPへの働きかけについてリードスピーチが行われた。その後、スタディに参加したインドネシア、マレ−シア、フィリピン及びタイから、それぞれの国内でどのようなフォロ−アップ活動を行っているかについて各々報告があった。
討議の結果、CDMのようなクレジットメカニズムの対象に原子力発電を含めるよう、UNFCCC/COPに対してFNCAメンバ−国が共同で働きかけていくことについて合意が得られた。また、COP-16に向けた作業会合のスケジュールに合わせて、各国コーディネーターが自国の外務省や環境省等の関連省庁に対して、2007年の共同コミュニケと先のCDMケーススタディの結果に基づく適切なアクションをとることが要請され、承認された。
また、CDMケーススタディのフォローアップとして、@参加メンバー国が自国のステークホルダーとコミュニケーションする際に活用できるように、サマリーレポートを事務局がまとめること、Aアップデ−トされた建設費用、電気料金、CO2排出権価格等を用いてさらに精度を高めたCDMケ−ススタディを実施すること、がそれぞれ合意された。
 
(3) ビジネスフォーラム及び原子力技術の商業化促進フォーラム開催要領
第10回大臣級会合で提案された「ビジネスフォーラム」と「原子力技術の商業化促進フォーラム」の2つの提案について議論した。まず、町コーディネーターより、2つの提案全体について概観するリードスピーチがあり、その後、「ビジネスフォーラム」についてはマレーシア、「原子力技術の商業化促進フォーラム」についてはフィリピンからそれぞれ詳細な提案があった。
次に、マレーシアのユナス氏及びワン・ザイン氏から「ビジネスフォーラム」の目的と適用範囲の概要について説明があった。マレーシアは、産業界と政府系投資組織が出席してワークショップやセミナーが開催されるものを想定しており、その目的として、@原子力発電に関する情報共有と議論を行うこと、A新規導入側と投資側又はプラント提供側の双方にメリットがあるような(ウィン-ウィン)ビジネス機会創出を促進すること、B早期に関係を構築することにより現地工事・調達機能を向上させること、を挙げた。また、大臣級会合と並行して実施することを想定しており、本年秋の中国での第11回大臣級会合から実施することを提案した。詳細については、マレーシア、中国及び日本の間で調整し、メンバー国に伝えることになった。なお、参加者は自費での参加とすることで合意された。
一方、「原子力技術の商業化促進フォーラム」についても、フィリピンのデラロサPNRI所長から説明があった。このフォ−ラムの目的は、原子力技術成果を研究機関から産業界へと広め、採用してもらい、さらにビジネスとして拡大する経験を共有しながら、そのような一連のプロセスを促進するための戦略を検討することである。開催時期としては6月よりも前に行いたいと提案された。また、アジェンダは今後協議される予定である。
 
(4) 研究炉利用及びアイソト−プ供給等に関するネットワ−ク構築
研究炉利用のための地域ネットワ−クとアイソト−プの製造・供給計画について、町コーディネーターより第10回大臣級会合での提案経緯・目的・主要な検討課題についての説明後、アイソト−プ協会・井戸理事より「医療用アイソト−プの安定供給のための提案とアジア・オセアニアネットワ−クシステムの構築に向けたアクションプラン」、中国・タイより新たな研究炉計画やアイソト−プ供給計画についてのプレゼンテ−ションが行われた。
韓国では20MWの新たな研究炉建設の計画があり、中国の研究炉は完成し、インドネシア・オ−ストラリアは既に他国へ医療用アイソト−プであるモリブデン−99の供給をスタ−トさせている。
2020年には世界のモリブデン−99需要が15%増になると予想され、カナダの炉が完全に停止してしまう場合、深刻な問題となる。日本ではモリブデン−99を100%輸入に頼っているが、現在供給は52%まで落ち込んでいる。但し、在庫があるため需要の80%は満たすことができている状況。
モリブデン−99の世界最大手の供給元であるカナダの炉は、数ヶ月後に運転を再開する予定であるが、老朽化のため今後5年程度しか稼働できない見込み。
IAEAからは、昨年来IAEAにおいてもアイソトープ供給の問題をテーマに会議を開催しており、FNCAの場においても議論が行われることを歓迎するとの意が表明された。
バングラデシュ及びフィリピンからも、アイソトープ供給の新たなネットワーク作りの要望が示された。2010年の研究炉ワークショップ(中国)においてこれらの問題について具体的に協議し、アジア・オセアニア地域のアイソトープ供給のためのロードマップ作りを行っていくことが合意された。
 

井戸氏(RI協会)

リュウ・ヨンデ氏(中国)

マニット・ソンスク氏(タイ)

10. セッション9:FNCAの将来予定

(1) 福井県における国際人材育成計画と第12回コーディネーター会合開催提案
笹井博見氏(福井県総合政策部企画幹)より福井県及び同県におけるエネルギ−研究開発拠点化計画が紹介され、第12回コーディネーター会合の福井県での開催が提案された。
セッション議長の町コーディネーターから参加者に諮った結果、開催合意が得られた。
福井県開催の決定を受けて、数カ国から、福井県がどのように原子力を受け入れたのかに興味があり当該会合でセッションを設けたいとの提案があった。また、町コーディネーターから半日程度のオ−プンセミナ−を設けてはどうかとの提案があった。
 
(2) 2010年度のFNCA会合スケジュ−ル案
事務局(内閣府)より、2010年度のFNCA主要会合の計画について以下の通り提案を行い、承認された。
 
@ 第11回大臣級会合:
  開催日程:2010年11月(あるいは12月)
  開催地:中国
  注1) 中国代表より12月の北京は寒いので、11月の方が好ましいとの発言有。
A 第2回「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」
  開催日程:2010年7月1〜2日(仮)
  開催地:韓国・ソウル
B 第12回コーディネーター会合:
  開催日程:2011年2月または3月
  開催地:日本・福井県
 
また、各プロジェクトの2011年度の国際会合(ワ−クショップ)開催時期とホスト国についても提案を行い、議論の結果、原則として以下の通り行うこととなった。
 
医療用
PET・サイクロトロン
2011年1月
マレ−シア
研究炉利用 研究炉基盤技術 2010年7月
中国
(2プロジェクト合同開催)
中性子放射化分析
原子力安全
マネジメントシステム
原子力安全
マネジメントシステム
2010年10月(要調整)
インドネシア
放射線安全・廃棄物管理 2010年5月
日本
原子力基盤強化 人材養成 2010年7月
オ−ストラリア
原子力広報 2010年11月
ベトナム

注2) 原子力安全マネジメントシステムの国際会合(ワークショップ)開催時期について、プロジェクトホスト国のオーストラリアは2010年10月開催を希望しており、インドネシアとの間で今後調整が行われる予定。

11. セッション10:閉会セッション

 今次コーディネーター会合のサマリーレポートは、次週にドラフト案がメールで事務局から各出席者に送付され、コメントを反映した上で最終版とする。
 閉会にあたり、町コーディネーターから閉会挨拶が述べられ、本会合が活発な議論によって目的をほぼ達成したこと、並びに本会合に参加した各国コーディネーター、専門有識者及び事務局への感謝の意が示された。



page top↑