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第14回 コーディネーター会合

2013年3月11日〜12日
東京 三田共用会議所



(会合サマリーレポート仮訳)
2013年3月11日から12日まで、内閣府及び原子力委員会の主催(文部科学省の共催)による第14回FNCAコーディネーター会合が、東京・三田共用会議所において開催された。本会合においては、FNCA日本コーディネーターである町末男氏が会合議長を務め、参加12ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)及びRCA地域オフィスより、FNCAコーディネーター、プロジェクトリーダー、RCA地域オフィス所長代理、上級行政官が出席した。



各セッションの内容は以下の通りである。

セッション 1: 開会セッション
近藤駿介原子力委員会委員長が開会挨拶を行い、すべての参加者に対する歓迎の意と、福島第一原子力発電所事故発生後から今日に至るまでの各国の支援に対する謝意を表した。また、原子力政策における検討事項や、原子力規制委員会の新たな安全基準等、事故後に日本政府が講じた対策について説明がなされた。近藤委員長は、ジャカルタにおいて開催された第13回大臣級会合の決議に関し、本会合において討議がなされることを期待し、挨拶を終えた。
参加者による自己紹介の後、会合アジェンダ案が採択された。
 
近藤 俊介
原子力委員会委員長

セッション 2: 第13回FNCA大臣級会合報告
町末男FNCA日本コーディネーターが、2013年11月24日にジャカルタにおいて開催された第13回大臣級会合の概要及び決議について報告し、本会合で扱う課題や決議の内容について説明を行った。
 
町 末男
FNCA日本コーディネーター

セッション 3: 研究炉利用開発
1. プロジェクトの成果報告
(1) 中性子放射化分析
海老原充プロジェクトリーダー(首都大学東京大学院理工学研究科分子物質化学専攻教授)が3つのサブプロジェクト、すなわち地球化学図作成と鉱物探査、食品汚染モニタリング及び海洋堆積物の汚染物質モニタリングの結果について報告した。中性子放射化分析測定のエンドユーザーとのネットワークの構築と、鉱物探査と環境保護分野における中性子放射化分析利用の成功事例の公開について、最善の努力を尽くすことが提案された。
 
海老原 充
首都大学東京大学院理工学研究科 分子物質化学専攻 教授
日本プロジェクトリーダー(中性子放射化分析)

(2) 研究炉ネットワーク
河村弘プロジェクトリーダー(日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター副所長)がワークショップの結果を紹介した。いくつかの参加国は、医療用RIの製造と供給の国内及び国際的な調整のため、国内委員会/グループを設立した。
RIの安定供給のための調整について具体的なスキームを定義するため、参加各国における上記の国内グループの議長が、次回のワークショップに参加することが提案された。
 
河村 弘
(独)日本原子力研究開発機構
大洗研究開発センター 副所長
日本プロジェクトリーダー(研究炉ネットワーク)

2. プロジェクトの今後の活動に関する意見交換
中性子放射化分析プロジェクトは、海洋堆積物汚染、鉱物探査、食品汚染の3つの分野において、中性子放射化分析の成果の利用者との連携を図るべく、あらゆる努力を払うべきであることが指摘された。中性子放射化分析法は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)や蛍光エックス線分析法(XRF)等、他の手法を補完する形で利用されるものである。
RIの製造に関する研究炉ネットワークの活動には、Mo(モリブデン)-99に加え、Co(コバルト)-60やIr(イリジウム)-192が含まれることが確認された。

セッション 4: 原子力安全強化・原子力基盤強化
1. プロジェクトの成果報告
(1) 原子力安全マネジメントシステム
オーストラリアコーディネーターのピーター・マックグリン氏が、2012年の韓国におけるワークショップ及びピアレビューの成果を報告した。同氏は本プロジェクトの成果を入手可能にする方策として、以下を提案した。
 @ 自己評価/ピアレビューツールをFNCAウェブサイトに掲載する。
 A 過去のピアレビューにおいて挙げられた良好事例をまとめ、FNCAウェブサイトに掲載する。
 
ピーター・マックグリン
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
国際関係シニアアドバイザー
FNCAオーストラリアコーディネーター
シギット・サントソ
インドネシア原子力庁(BATAN)
原子炉技術・原子力安全センター
ヒューマンファクター・原子力安全グループ長

続いて、インドネシア原子力庁(BATAN)のシギット・サントソ氏が、2010年10月のG. A. Siwabessy多目的研究炉(RSG-GAS)におけるピアレビューでの指摘を受け、これまでインドネシアが行ってきた改善の取組について、以下の通り報告を行った。
· 軽微な安全上の問題やニアミスについて、毎日の打合せで積極的に報告を行うようになった。
· 原子炉プールの入り口及び周辺に、警告の標識や基本的な規則を掲示した。また避難経路の表示を追加した。
· 原子炉施設の訪問者に対し、十分な説明を行うようになった。また展示ホールにRSG-GASの安全に関する方針を掲示した。
· その他
参加国は本プロジェクト、特にピアレビュー活動を高く評価した。オーストラリアは、2013年以降の本プロジェクトの活動については、次回ワークショップにおいて討議がなされ、その結果が第15回コーディネーター会合において提案される予定である旨を述べた。ベトナムは、本プロジェクトが継続する場合、2014年にピアレビューを開催する意向を表明した。

(2) 放射線安全・廃棄物管理
服部隆利プロジェクトリーダー代理(電力中央研究所原子力技術研究所放射線安全研究センター副センター長/上席研究員)が、2012年度の活動成果である、フィリピンでのワークショップ、放射線安全に関する統合報告書の更新、放射線安全・廃棄物管理ニュースレター第6号の発行について報告した。また、FNCAの放射線安全・廃棄物管理の専門家におけるネットワークの立ち上げへ向けた準備を開始することを提案した。
 
服部 隆利
(一財)電力中央研究所原子力技術研究所
放射線安全研究センター 副センター長/上席研究員

(3) 核セキュリティ・保障措置
千崎雅生プロジェクトリーダー(日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター長)が、2012年度のワークショップにおいて、3S及び核セキュリティ・保障措置の能力構築に関する議論が行われたことを報告した。また、3Sの統合的なアプローチを模索するため、FNCAの原子力安全マネジメントシステムプロジェクトまたは放射線安全・廃棄物管理プロジェクトとの共同セミナーを開催することが提案された。さらに、FNCAやANTEP(アジア原子力教育訓練プログラム)、APSN(アジア太平洋保障措置ネットワーク)のウェブサイトを使用し、核セキュリティ・保障措置に係る人材育成活動に関する情報を共有することが提案された。
 
千崎 雅生
(独)日本原子力研究開発機構
核不拡散・核セキュリティ総合支援センター センター長
日本プロジェクトリーダー(核セキュリティ・保障措置)

(4) 人材養成
山下清信プロジェクトリーダー(日本原子力研究開発機構原子力人材育成センター長)が、多くのプロジェクト参加国が国内の人材育成ネットワークを設立し、ネットワークの拠点機関とフォーカルポイント(国際的な人材育成協力のための一本化された窓口)の指定を行った旨を報告した。また、原子力発電のための人材育成における大学と原子力研究機関の必要不可欠な役割を強調した。さらに、プロジェクトをより効果的かつ有益なものにするため、各国が人材育成の計画及び予算面の意志決定者をプロジェクトリーダーとして任命するよう要請した。
発表に続く質疑の中で、人材育成の経験を共有しプロジェクトの方向性を決定するため、人材育成に関与する上級行政官が次回ワークショップに参加すべきであることが提案された。また町コーディネーターが参加各国に対し、ANTEPの枠組の下、研修・訓練受講者への可能な支援を伴う人材育成プログラムを提供するよう呼びかけた。
 
山下 清信
(独)日本原子力研究開発機構
原子力人材育成センター センター長
日本プロジェクトリーダー(人材養成)

2. プロジェクトの今後の活動に関する意見交換
原子力安全と核セキュリティ・保障措置はともに重要であるため、原子力安全マネジメントシステムプロジェクトと核セキュリティ・保障措置プロジェクト間の連携について、核セキュリティの慎重に扱うべき一面を考慮しつつ、可能性を探るべきであることが言及された。

セッション 5: 放射線利用開発
1. プロジェクトの成果報告
(1) バイオ肥料
横山正プロジェクトリーダー(東京農工大学大学院農学研究院生物生産科学部門教授)が、以下のプロジェクトの課題を報告した。
 @ 商業生産のための放射線滅菌の拡大
 A 多機能バイオ肥料の開発と農家における利用拡大に向けた戦略
 B バイオ肥料と放射線加工により製造されたオリゴキトサンの相乗効果に関する研究
また、2012年度の最も重要な成果として、フィリピンにおいて、より高品質なキャリアを製造するための放射線滅菌技術について、商業利用が開始されたことが紹介された。
 
横山 正
東京農工大学大学院 農学研究院
生物生産科学部門 教授
日本プロジェクトリーダー(バイオ肥料)
カイルディン・ビン・アブドゥル・ラヒム
マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)
農業科学技術・生物科学部 部長
マレーシアプロジェクトリーダー(バイオ肥料)

マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)のカイルディン・ビン・アブドゥル・ラヒム氏が、マレーシアにおけるバイオ肥料生産の現状と課題、及び成功に向けた方策に関して発表を行った。また、農業従事者からバイオ肥料に対する幅広い支持を獲得するためには、機能、有効性、使いやすさ、及び経済的利益といった点での汎用性が重要であることが言及された。
さらに、現在フィリピンにおいては、放射線滅菌のコストは熱滅菌とほぼ同じであることが付言された。また、他の参加国が、持続可能な農業を促進するため、放射線滅菌の商業利用に関するマレーシア及びフィリピンにおける成功例を参考にすることが奨励された。

(2) 電子加速器利用 (天然高分子の放射線加工)
玉田正男プロジェクトリーダー(日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所所長)が、放射線加工により製造された超吸水材(SWA)と植物生長促進剤(PGP)の効果について報告を行った。PGPの研究におけるバイオ肥料プロジェクトとの協力、エンドユーザーへの技術移転、IAEA/RCAとの情報交換の強化が提案された。
 
玉田 正男
(独)日本原子力研究開発機構
高崎量子応用研究所 所長
日本プロジェクトリーダー(電子加速器利用)
チャリトー・タランキュラン・アラニラ
フィリピン原子力研究所(PNRI)
原子力研究部・化学研究グループ
上級科学研究スペシャリスト
フィリピンプロジェクトリーダー(電子加速器利用)

フィリピン原子力研究所(PNRI)のチャリトー・タランキュラン・アラニラ氏は、フィリピンにおけるPGP利用の成功事例に関する発表の中で、天然高分子由来のオリゴ糖であるカッパカラギーナンのイモ類、イネ、リョクトウ(緑豆)、レタス、及びトウモロコシに対する著しい効果について、報告を行った。
フィリピンにおいては、農業部門との協力の下、オリゴカッパカラギーナンPGPの商業化へ向けたフィールド試験が実施される予定であることが言及された。

(3) 放射線育種
中井弘和プロジェクトリーダー(静岡大学名誉教授、同学元副学長)が、イネの品質改良育種サブプロジェクトが有益な成果を得て、3月で成功裡に終了することを報告した。また、「持続可能な農業に向けたイネの突然変異育種」に関する次期プロジェクトが、以下の2つの主要なアプローチにより開始されることを紹介した。
 @ 多様な環境ストレスへの耐性の付与
 A 低投入持続型農業への適応性の付与
議論においては、イオンビームが突然変異のための有益なツールであることが強調された。突然変異研究のためのイオンビーム利用に関する協力はすでに行われており、今後も継続される予定である。また、環境に優しく持続可能な農業のため、他のFNCAプロジェクト及びIAEA/RCAプロジェクトとの望ましい協力を推進することが提案された。
 
中井 弘和
静岡大学名誉教授 元副学長
日本プロジェクトリーダー(放射線育種)

(4) 放射線治療
辻井博彦プロジェクトリーダー(放射線医学総合研究所フェロー)が、放射線療法及び化学療法を用いた子宮頸がんと上咽頭がんのプロトコル(治療手順)の多国間共同臨床試験について報告した。本プロジェクトにおいて確立されたプロトコルは、国際学会や国際学術誌において発表され、また各国において標準治療法として採用される等して、アジア地域の医療と放射線治療に大きな利益をもたらしている。また、新たな活動として、乳がんと子宮頸がんの臨床試験を開始する計画が提案された。
 
辻井 博彦
(独)放射線医学総合研究所 フェロー
日本プロジェクトリーダー(放射線治療)
ヤワラ・チャンシルバ
マヒドン大学医学部シリラジ病院
放射線科放射線治療部 准教授
タイプロジェクトリーダー(放射線治療)

タイのマヒドン大学のヤワラ・チャンシルバ氏より、子宮頸がん及び上咽頭がんの放射線療法のプロトコルがタイにおけるがん患者のより良い生存率と生活の質に寄与し、標準治療法として採用されたことが報告された。

セッション 6: 原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネルの成果と計画
フィリピンコーディネーターのアルマンダ・M・デラ・ローサ氏が、原子力安全に関する福島閣僚会議(2012年12月 日本/IAEA共催)の結果における、事故の教訓及び緊急時準備・対応や放射線防護等の原子力安全強化といった主要な点について紹介を行った。
 
アルマンダ・M・デラ・ローサ
フィリピン原子力研究所(PNRI)
所長
FNCAフィリピンコーディネーター
尾本 彰
国立大学法人東京工業大学
特任教授

東京工業大学の尾本彰氏が、2012年7月26日〜27日にバンコクにおいて開催された第4回パネル会合について報告を行い、次回会合の議題としてセキュリティに関する法的処理、リスクコミュニケーション及びステークホルダーの関与を取り上げることが合意された旨を述べた。
第5回パネル会合において追加的に取り扱うべき議題について議論が行われ、中小型炉開発の経済性等に関する検討を行うことが挙げられた。マレーシアは、社会的に大きな影響力を有し、かつ原子力や放射線に関する問題を意識するようになった医師に関する議論の場を設けることを提案した。

セッション 7: 第13回大臣級会合のフォローアップ項目に関する討議
1. 放射線利用部門とエンドユーザーのネットワークの構築
町コーディネーターが、潜在的なエンドユーザーとの連携を有する、プロジェクト運営委員会の設置に関する日本の取組について紹介し、FNCA各国においても、潜在的なエンドユーザーを委員として取り込んだ運営委員会が、各プロジェクトにおいて設立されるべきであると提案した。
続いて、マレーシアコーディネーターのモハメド・ノール・モハメド・ユナス氏が、マレーシアにおける技術移転の模範例について、韓国原子力研究所(KAERI)のイ・ジュウン氏が、KAERIの先端放射線技術研究所(ARTI)で行われている分野横断的な研究活動と、放射技術の産業クラスター設立への取組について、それぞれ紹介を行った。
 
モハメド・ノール・モハメド・ユナス
マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)
副長官(科学技術開発プログラム部門)
FNCAマレーシアコーディネーター
イ・ジュウン
韓国原子力研究所(KAERI) 先端放射線研究所
放射線実用化技術部 部長

タイ、インドネシア、フィリピン、カザフスタン及びバングラデシュが、各国における放射線利用の研究開発成果をエンドユーザーにもたらすメカニズム及び商業化に向けた取組について述べた。商業化においては、企画の段階で市場の需要を考慮することが重要であることが指摘された。

2. 放射線利用の社会経済的効果の評価
第13回大臣級会合において、放射線利用の社会経済的効果に対する評価について提言がなされたことを受け、モハメド・ノール・モハメド・ユナス氏が、マレーシアにおいて2006年から2010年にかけ実施された、原子力技術の社会経済的効果に関するケーススタディの結果を紹介した。
また、町コーディネーターが、内閣府により2005年に実施された放射線利用の経済規模に関する調査結果を紹介した。
オーストラリアからはピーター・マックグリン氏が、生命科学や環境、国家安全保障等の様々な分野において、放射線利用技術が多大な社会経済的効果をもたらした事例を紹介した。
マレーシアより、2012年の大臣級会合においてこの問題を提起した理由として、社会経済的効果を評価するための指標の必要性が挙げられ、続く議論の中では、経済規模を評価する適切な方法が重要であることが指摘された。

セッション 8: IAEAとの連携(RCA活動報告)
RCA地域オフィス所長代理のイム・ジンギュ氏は、放射線加工と放射線治療の分野におけるRCAとFNCAの協力の概要を報告した。また協力強化のために以下を提案した。
 @ 協力可能な分野と活動の検討
 A さらなる協力が可能である他分野のプロジェクトの特定
 B 類似または重複した活動に関する調査
電子加速器実用化のための指導者訓練を目的とした、新しいRCA/国連開発計画(UNDP)共同プロジェクトの内容について、討議が行われた。また、放射線育種プロジェクトについて、放射線育種専門家の後継者育成が必要であることから、IAEA/RCAとの協力を推進することが提案された。
FNCAは、放射線育種プロジェクト、電子加速器利用(天然高分子の放射線加工)プロジェクト及び放射線治療プロジェクトといった特定のプロジェクトにおける相乗効果や経験の共有のため、IAEA/RCAとの協力を継続し、また、FNCAに参加していないRCA加盟国と経験を共有すべきであることが合意された。
 
イム・ジンギュ
国際原子力機関(IAEA)
アジア原子力地域協力協定(RCA)
RCA地域オフィス 所長代理

セッション 9: FNCAの今後の活動について
町コーディネーターが、FNCAの2012年度の成果のレビューと、2013年度の活動計画に関するリードスピーチを行った。また放射線育種プロジェクトの主要な成果を要約した上で、持続可能かつ環境に優しい農業の拡大の観点から、イネの新たな品種を開発する時期フェーズへの移行を提案し、承認を受けた。また、2013年度のFNCA会合の開催地を提案し、承認された。さらに、現行のプロジェクト間の連携を推進すべきであることを指摘した。
続いてFNCA各国コーディネーターより、FNCAプロジェクトに関する講評が行われた(「別添 各国コーディネーターによるプロジェクトについての講評」参照)。
各プロジェクトが2012年度に達成した成果は、参加国に有益であるとして、高く評価された。また、重要な主食であるコメの持続可能な農業の拡大を目的として、放射線育種プロジェクトの3年間の延長が合意された。

会合では、2013年度の計画が以下の通り合意された。
 
プロジェクト 開催地 日程
 放射線育種  インドネシア  2014年2月
 バイオ肥料  フィリピン  11月
 電子加速器利用  マレーシア  10月
 放射線治療  韓国  11月
 研究炉ネットワーク  カザフスタン  10月
 中性子放射化分析  タイ  12月
 原子力安全マネジメントシステム  バングラデシュ  11月
 放射線安全・廃棄物管理  モンゴル  9月
 人材養成  日本  9月
 核セキュリティ・保障措置  中国  2014年1月

セッション 10: 閉会セッション
第14回コーディネーター会合のサマリーレポート案が提示され、FNCAコーディネーターにより採択された。
第14回コーディネーター会合の議長である町コーディネーターが結論と提言を提示し、討議と変更の後に採択された。各国のFNCAコーディネーターには、結論と提言に基づき、必要な行動を執ることが求められる。

「結論と提言」

1. 主食となる作物の1つであるコメの持続可能な農業を促進するため、放射線育種プロジェクトの3年間の延長が合意された。
 
2. FNCAコーディネーターにより、適切な議長を任命の上、RI製造・供給のための国内ネットワークを設立することが合意された。
 
3. FNCAコーディネーターは、鉱物資源探索・海洋環境汚染・食品汚染の分野における中性子放射化分析のエンドユーザーとなる適切なパートナーの特定にあたって、プロジェクトリーダーを支援すべきであることが合意された。
 
4. 人材育成に責任を持つ上級行政官が、人材育成戦略の経験を共有し、人材養成プロジェクトの方向性を決定するため、次回の人材養成ワークショップに出席することが合意された。
 
5. 第13回大臣級会合の決議に基づき第14回大臣級会合において報告を行うため、放射線利用部門と潜在的なエンドユーザーのネットワーク構築が参加国内で達成されるべきであることが合意された。
 
6. FNCAコーディネーター、プロジェクトリーダー、関係する専門家、政府関係者、潜在的エンドユーザーの代表者により構成される、各プロジェクトの国内運営委員会の設立が提案された。
 
7. FNCAコーディネーターが各プロジェクトリーダーとの間でFNCAの方針と方向性に関する共通認識を培い、またプロジェクトリーダーが各プロジェクトの成果に関する情報を共有する場として、年1回各国において、すべてのプロジェクトリーダーを招集し会合を開催するべきであることが提案された。
 
8. プロジェクト活動の強化及び情報共有のため、プロジェクトリーダーに加え、参加各国または参加機関が専門家1名をワークショップに追加で派遣するために渡航費を支援することが奨励された。
 
9. ワークショップの充実化とプロジェクト遂行強化のため、コーディネーターによる参加者の指名は慎重になされるべきであることが提案された。
 
10. 次回の検討パネルにおいては、第13回大臣級会合における合意の通り、「核セキュリティに関する法的処置」、「リスクコミュニケーション」、及び「ステークホルダーの関与」を主要議題とすることが合意された。
 
11. FNCAは、放射線育種プロジェクト、電子加速器利用(天然高分子の放射線加工)プロジェクト及び放射線治療プロジェクトといった特定のプロジェクトにおける相乗効果や経験の共有のため、IAEA/RCAとの協力を継続し、また、FNCAに参加していないRCA加盟国との経験を共有すべきであることが合意された。
 
12. ワークショップの開催国及びパネル会合の開催時期を含め、2013年度の計画が承認された。
 
13. 社会経済効果の評価について、マレーシアの経験に基づく方法論及びプロトコルの開発について情報交換を行うことが合意された。
 
 最後に、町コーディネーターによる閉会挨拶において、すべての参加者の素晴らしい貢献に対する謝意が表された。



別添 各国コーディネーターによるプロジェクトについての講評(仮訳)

1. オーストラリア:
オーストラリアは現在、FNCAの10プロジェクトのうち6プロジェクトに参加し、原子力安全マネジメントシステムプロジェクトを主導している。発表は質が高く、この1年間のプロジェクトの実績と成果を明示するものであった。オーストラリアは、アジア地域における原子力科学技術の安全かつ効果的な利用を促す現在のプロジェクトの継続を支持する。

2. バングラデシュ:
バングラデシュは、アジア地域の社会経済開発に向けた原子力科学技術の平和利用において、FNCA及び日本政府が実施する取組とイニシアティブを高く評価する。FNCA活動を通し、参加国間で協力的な雰囲気が醸成された。FNCAによってもたらされた指針・方向性・提言は参加国にとって非常に有益であると考える。バングラデシュは、FNCAの枠組における協力活動に対し、継続的な支援と関与を行うことを表明する。

3. 中国:
FNCAは、アジア地域の原子力分野における協力と交流の促進に大きな功績をあげてきた。今後、FNCAは原子力安全により多くの注意を払うべきである。中国は他の参加国とともに、アジアにおける安全かつ効率的な原子力エネルギー開発のネットワークシステムの構築に尽力する。

4. インドネシア:
インドネシアは、研究炉及び放射線の安全かつ効果的な利用、人材育成、核セキュリティ・保障措置の重要性を強調し、原子力安全マネジメントシステムプロジェクトの継続を提案する。

5. 日本:
日本は、日本によりワークショップに招待される1名の参加者に加え、各国により専門家/行政官1名が追加で派遣されるための支援が実施されることを提案する。また予算が許すのであれば、ステークホルダー関与に関する活動の再開を希望する。

6. カザフスタン:
カザフスタンは、将来の具体的なFNCA活動、すなわち中性子放射化分析、研究炉ネットワーク、放射線安全・廃棄物管理、人材養成及び放射線利用開発について提案を行った。

7. 韓国:
FNCAプロジェクトは大変有益なものであり、参加国間における協力の強化に大きく貢献してきた。韓国はバイオ肥料プロジェクトから脱退し、将来的に新しい研究課題として、電子加速器利用プロジェクトに再び参加する予定である。韓国原子力研究所(KAERI)の先進放射線技術研究所(ARTI)は、IAEAの協働センターとして機能しているため、IAEAとの協力の下、先進放射線技術の分野においてFNCAとの活動を行っていく所存である。

8. マレーシア:
マレーシアは、市場あるいはエンドユーザーに対する原子力技術の移転が、FNCAにより提案された主要な成果であることを強調する。サプライチェーンの確立における成功要因及び制限、あるいは制約を明らかにする新たなプロジェクトを提案する。また、社会経済的効果に関する新たなプロジェクトの設置を提案する。

9. モンゴル:
厳しい気候条件と水の供給不足を踏まえ、モンゴルは放射線育種やバイオ肥料のような農業利用プロジェクトを重要と考える。加えて、電子線加速器利用プロジェクトで遂行される超吸水材の研究は、干ばつ時の水の供給問題を解決するための一助となる。また、モンゴルは、医療用アイソトープ供給のための地域ネットワークや、核セキュリティ・保障措置に関する構想を全面的に支持する。さらに、レアアース等の鉱物資源探査のための中性子放射化分析利用について、FNCAによる支援を望む。

10. フィリピン:
FNCAプロジェクトは参加国に有益な成果をもたらしており、フィリピンはこれらのプロジェクトの継続を支持する。原子力技術の社会経済的効果に関する評価方法を共有するためのプロジェクト、あるいは活動は支援されるべきである。核セキュリティ・保障措置プロジェクトについて、IAEA及び他の多国間組織によるイニシアティブとの重複の可能性を懸念している。

11. タイ:
タイはすべてのFNCAプロジェクトに参加しており、乳がんに関する放射線治療プロジェクトの重要性、また中性子放射化分析プロジェクトにおける成果が、将来のためにタイの環境行政と共有されたことを強調する。

12. ベトナム:
FNCAプロジェクトへの参加は、ベトナムにおける原子力エネルギーの開発及び利用において重要な貢献を果たしてきた。特に、人材育成は非常に重要で不可欠なものであると考えている。また、日本がより長い期間で、原子力発電技術に関する教育訓練コースを準備することを希望する。この場合、ベトナムと日本で費用支出を分担する。