アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
第10回大臣級会合
概要
2009年12月16日(水)、東京(三田会議所)
内閣府・原子力委員会主催により、第10回FNCA大臣級会合が2009年12月16日(水)、東京(三田共用会議所)において開催された。FNCA参加国であるオーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの全10ヶ国から大臣級代表(大臣4ヵ国、副大臣2ヵ国、研究機関長3ヵ国、他)が一堂に会し、原子力分野での国際協力に関し幅広い観点から討議を行い、以下の点を含む決議と会合サマリを採択した。(プログラム)(参加者リスト)
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FNCAで実施したケーススタディにおいて、気候変動枠組条約下のクリーン開発メカニズム(CDM)等に原子力発電を含める有益性が初めて定量的に確認された。2013年以降の気候変動に関する国際的枠組の議論において、クレジットメカニズムに原子力発電が組み込まれるよう、国内及び国際社会への働きかけを行う。 |
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原子力発電導入の基盤整備として、地震、津波等の自然災害に対する原子力安全に係る知識共有の促進や、核セキュリティ及び核不拡散/保障措置についての人材育成や技術基盤の整備を、既発電国が有する既存の機能を活用して実施する。 |
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研究炉に関して、既存炉及び計画中の新設炉の効率的活用、それらによるアイソトープ(モリブデン99を含む)及びシリコン半導体原料の製造・供給に関するネットワークを含めた連携協力の可能性を検討する。また、放射線利用技術の実用化に関する実用化促進フォーラムの開催を検討する。 |
なお、次回のFNCA大臣級会合は、来年、中国において開催される予定である。
【会合結果詳細】
(1) セッション1:開会セッション
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菅直人 副総理兼内閣府特命担当大臣(科学技術政策) |
菅副総理より歓迎挨拶が行われた。菅副総理は、CO2を排出しない原子力を「グリーンイノベーション」の重要な構成要素と位置付け、安全を大前提に原子力発電を着実に推進することを表明すると共に、原子力を取り巻く世界情勢や、FNCAにおける10年間の取り組みについて述べ、メンバー各国が今後もFNCA活動へ積極的に参加・協力するよう要請した。続いて、出席者の自己紹介、大臣級会合の準備会合として前日15日(火)に行われた上級行政官会合(SOM)の結果報告(日本・梶田内閣府官房審議官)が行われた。
(2) セッション2:カントリーレポート
前半のセッション2-1では、冒頭にIAEA天野事務局長のビデオメッセージが上映され、続いてオーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本の順に、各国の原子力発電や放射線利用に関する活動が報告された。我が国からは近藤委員長が報告を行った。後半のセッション2-2では、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムから報告がなされた。天野事務局長メッセージ及び各国の報告概要は下記の通り。
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天野IAEA事務局長(ビデオメッセージ) |
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IAEAとFNCAは、原子力エネルギーを効率的、効果的かつセキュアに、平和利用に限定して推進するという共通の目的を持っている。今後、アジアは世界の中で大きな役割を果たすと考えており、技術開発の面でも、例えば高速炉開発について中国のCEFRや日本のもんじゅ、インドの500MW炉等が注目される。IAEAは新しく原子力発電を導入しようとする各国のニーズに合わせて基盤整備に協力している。また、技術協力プログラムでは、発電だけでなく食料や水、健康等に寄与することを目指している。さらに、現役世代の引退に伴う人材育成も重要な課題である。IAEAは様々な人材育成プログラムを持っており、FNCAにもIAEAの恩恵を享受してほしい。韓国やEUとはインターネットを使った教育トレーニングコースで協力している。
原子力発電を行う国は、平和利用のために安全性とセキュリティの規格にレベルを合わせることが重要であり、国際条約でそのような安全性とセキュリティを担保している。まだ条約を締結していない国は早期に締結してほしい。また、アジア安全ネットワーク(ANSN)を通じてそれらを実現していってほしい。
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天野之弥
国際原子力機関事務局長
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Dr,ロナルド・ハッチングス
オーストラリア原子力科学技術機構専務理事代理
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オーストラリア |
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現政府には原子力発電導入の計画はない。しかし、エネルギー需要が急増し、オーストラリア以上に代替エネルギー源が制限される国々のニーズを認識しており、地球規模のエネルギー・ミックスにおいて、原子力発電が重要な位置を占めることを受け入れている。このような観点から、綿密な環境保護と安全性の配慮を前提に、ウラン供給を継続していくこととしている。温暖化ガス放出低減については、現状は2020年までに5%減であるが、コペンハーゲンで合意がなされれば25%減まで対応する予定である。また、2020年までに20%の再生可能エネルギー導入も政府の目標になっている。
OPAL研究炉での中性子計測研究に追加予算が新規に認められ、気候変動や環境問題等への研究拡大が期待されている。FNCAの活動では、原子力安全文化プロジェクトを引き継ぐ形で新たに承認された安全管理システムプロジェクトを主導し、2010年2月にシドニーで第1回ワークショップを開催予定である。
また、放射線防護・廃棄物管理、放射化分析、及び人材養成の各プロジェクトにも参加する。さらにFNCAとRCAとの協力計画も支援していく。
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バングラデシュ |
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現政府は、独立50周年の2021年までに、技術的に先進し繁栄した国への発展を目指した「デジタル・バングラデシュ」の構築を宣言している。目標は、貧困の排除と持続可能な発展であるが、このためには、経済性、環境、安全性およびエネルギー安全保障の観点から、原子力は不可欠な選択肢と考えている。
同時に、多くの親交ある原子力発電プラント供給国と覚書を取り交わし、基盤整備を強化する活動を進め、サイト開発の計画も進捗している。原子力発電導入では、人材育成は依然として最も重要な課題と認識しており、FNCA加盟国内でのより一層の協力が必要である。また、原子力をCDMに含める努力も必要と考えている。
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Mr.ヤーフェシュ・オスマン
バングラデシュ科学・情報・通信技術省大臣
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Mr.チェン・チュウファ
中国国家原子能機構主任
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中国 |
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中国政府とIAEA共催の「21世紀の原子力エネルギー」閣僚級会合(2009年4月)では、80余カ国から800人以上の参加があり、原子力開発への確固たる確信が表明された。政府は、2020年までに2005年のGDP当たりの炭素放出量の40%〜45%低減に対応するとしている。これは、新たな原子力発電開発の機会をもたらすものである。現在11基9.1GWeが運転中、さらに24基25.4GWeの設備容量が承認されている。2020年には40GWeが運転中で、18GWeが建設中の予定である。また、過去50年の努力の結果、ウラン探鉱・採鉱、転換、濃縮、燃料加工の技術を習得し、ほぼ完全な原子力産業システムを確立している。さらに、放射性廃棄物の問題解決のため、施設解体、再処理、廃棄物処分にも注力している。また、原子力安全と緊急時対応の重要性から、IAEAの安全条約に加盟している。2009年11月には、初めて緊急時訓練を、日本、韓国、IAEAの視察の下に実施した。FNCA活動では、2000年の発足以来、研究炉の活用など8分野を中心に実りある協力を遂行してきており、これまで豊富な経験を得てきた。今後、核医学、放射線の農業利用など放射線技術応用の研究活動に、中国の専門家や研究者が一層参加するよう呼びかけていく。一方、中国は、他の途上国同様に、研究し決着させるべきエネルギー開発や環境改善の経済的及び技術的問題に直面している。中国は、広くアジアの国々と、原子力分野での情報交換や協力を望むものである。
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インドネシア |
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2010-2014年の中期開発計画では、科学技術は、持続可能な繁栄と国家の文化生活のために主要な役割を果たすとされている。研究技術省は、科学技術政策のレビューを行う責任があり、6つの優先度の高い分野に焦点を置くこととしている。原子力科学技術はそのうちの少なくとも4分野:食料・農業、エネルギー、保健、医療に含めることとされている。2007年に制定されたAct17の法律では、安全を前提に2015-2019年に最初の原子力発電が利用できることが明記されている。原子力発電の国の規制の準備に関しては、原子力規制庁(BAPETEN)が、許認可と検査に必要となる人材育成を含め、全体の基盤整備計画を開始している。1982年以来成功裡に遂行されてきた、照射誘起による突然変異育種に関する全ての発明に対して、政府は原子力庁(BATAN)を農業革新賞2009として表彰した。アイソトープ生産に関しても、低濃縮ウランを用いたテクネチウムジェネレーターの開発に成功している。人材育成は、依然としてFNCA加盟国の一般的課題であり、人材育成プロジェクトを最優先して進めるべきである。また、すべてのFNCA加盟国はANSNを活用すべきである。 |
Dr.フディ・ハストウォ
インドネシア原子力庁長官
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近藤駿介
原子力委員会委員長
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日本 |
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商用発電炉は現在53基、48GWeが運転中であり、発電量全体の26%、一次エネルギー全体の10%を供給している。これに加えて3基が建設中、さらに3基が設置許可申請中である。今後10年間で9基の商用炉が運転開始する見込みであり、また、MOX燃料を用いた発電も並行して進められている。研究開発では、2050年の実用化に向けて高速炉、核燃料サイクルの開発をすすめており、放射線利用では、高崎研イオン照射研究施設(TIARA)、重粒子ガン治療施設(HIMAC)、大強度陽子加速器施設(J-PARC)等の多様な施設がある。核セキュリティに関しては、IAEAの「核物質と核施設の防護(INFCIRC/225/Rev4)」を重視している。また、核セキュリティ基金等を通じて、アジアでの核セキュリティにも貢献している。IAEAのセミナー開催なども続けたい。新規導入各国での原子力導入のための基盤整備にも協力したいと考えている。
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韓国 |
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地域の原子力利用を推進するために、FNCAは重要な枠組みであり将来に亘ってもその役割は継続するものと期待される。韓国もまた積極的に貢献し、国際協力に参加していく所存である。人材育成は、如何なる国においても、原子力エネルギー導入成功の要の要因であり、国際的共同体の支援は決定的役割を果たすと信じている。韓国は、アジア原子力教育ネットワーク(ANENT)、国際原子力安全スクール(INSS)、及び国際原子力安全上級者プログラムを通じて、専門家の育成と知識管理に関して、新規参入国を支援する努力を既に開始している。韓国は、原子力新規参入者の訓練プログラムを支援するため、来年初めにIAEAに特別な貢献をすることを計画している。韓国政府は、経済成長と安心できる環境の入念なサイクルの確立、いわゆるグリーン・グロースに強く関与することを宣言しており、2030年まで原子力施設の増設を継続することを計画している。現在20基の原子力発電で総発電量の36%を賄っているが、2030年末には、59%になる見込みである。また、今年、韓国は、国際原子力規制者会合(INRA)を成功裡に開催した。さらに、昨年8月には、トップ規制者会合をソウルで開催している。一方で、放射線と放射性アイソトープの医療利用に関する研究も進めている。この活動のひとつとして、放射性アイソトープの生産、R&Dと医療処置等のために、7つのサイクロトロン・センターを整備した。韓国は、第2回放射線研究に関するアジア会議(ACRP2009)を主催している。FNCA創設の10周年に当たり、アジア地域の原子力エネルギー利用にFNCAが重要な役割を果たして行くことを信じている。 |
Mr.イ・サンモク
韓国科学技術部副大臣
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Dr.マキシマス・ジョニティ・オンキリ
マレーシア科学技術革新省大臣
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マレーシア |
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マレーシアのエネルギー供給は、2000年に策定された5種燃料多様化政策(石油、水力、天然ガス、石炭、再生可能エネルギー)に基づいている。2008年のマレーシア半島の電力は64%が天然ガス、27%が石炭、7%が水力、1%以下が再生可能エネルギーによる。最近の調査によれば、マレーシアは、2020年以降にはエネルギー輸出国から輸入国になると見られている。2009年6月、政府は、原子力を2020年以降のマレーシア半島の燃料選択肢とすることを決定した。2010年-2030年の国のエネルギー政策の形成に関して、特に電力部門の将来のエネルギー・ミックスの包括的評価を進めている。原子力導入に必要となる基盤整備等の包括的な検討を始めたところである。IAEAの勧告で示されているNuclear Energy Program Implementation Organization (NEPIO)のような機関をとおして検討を進めることを考えている。原子力発電計画を支援するための国家人材育成のロードマップも策定している。加えて、既存の原子力法・規制法に関して、包括的な規制システムの構築も考慮して検討を進めている。喫緊の課題がPAの確保である。マレーシアは、FNCAの将来活動として次の事項を提案する。a) 既存の政府間協力を補完するため関連する民間産業組織でのFNCAビジネスフォーラムの創設、b) 原子力発電プログラムでのFNCA加盟国間での強力な支援構想、c) 既存のFNCAプロジェクト等を通じた公衆への情報公開の強化、d) FNCA加盟国間で核燃料サイクルと関連する支援に関する地域多国間協力の検討と開発、e) アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)の下での人材育成計画の詳細な調整、f) 将来FNCA協力における原子力技術とバイオ技術の融合の検討、g) FNCA加盟国によるFNCAプロジェクトの活動への積極的な参加の促進である。
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フィリピン |
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原子力科学技術は、大統領調整R&D評議会(PCCRD)が指摘している重点戦略分野のうち保健、農業、環境および天然資源の分野に間接的に関わっている。また、国のエネルギー政策には、その独立性が根幹にある。即ち、2010年までに60%の自主供給および世界的に競争力のあるエネルギーであることを目指している。このうち代替電力としての原子力発電は1985年までエネルギー・ミックスに組み入れられ、バターン原子力発電所 (BNPP)の運転開始まで漕ぎ着けたが、1986年の政権交代で、封印された経緯がある。最近の石油の高騰や気候変動への対応から原子力発電が見直されBNPPの再稼動が浮上している。しかし、再稼動のための法律は、議会で留保され、独立の規制機関を創設する包括的な原子力法も検討中である。KEPCOとの覚書の範囲内では、BNPP再稼動の検討は完了している。1998-2035年のエネルギー計画でも、2035年までに4基2400MW設備容量の原子力発電が計画されていた。
原子力科学技術は、農業、保健、地球・海洋科学、物質科学、製造・プロセス工学、環境の分野で継続して応用が進捗している。FNCAの枠組みでは、農業分野ではバイオ肥料等、環境分野では地下水系の評価への同位元素の応用等で成果を挙げている。
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Dr.エストレラ・ファゲラ・アラバストロ
フィリピン科学技術省大臣
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Dr. チンダ・チョーティパニット
タイ科学技術省事務次官
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タイ |
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原子力発電計画に着手しようと考えているアジアの一国として、最近タイでは、長い間継続してきた原子力平和利用の推進政策が再活性化している。タイ政府は、最初の原子力発電プラントを2020年および2021年にそれぞれ1基、合計2基、設備容量2000MWeを建設することを目標に据えている。また、政府は、エネルギー省の下に原子力発電開発局(NPPDO)の設置を承認した。この組織が原子力発電基盤整備の調整機関として、適切な技術選択、安全性、廃棄物処分問題、規制基盤、法的枠組、そして人材育成に責任を持つタイの他の機関の間の調整を行う。2010年5月終了の計画でフィージビリティ・スタディも進めている。タイは、FNCA加盟国のエネルギー確保と地球温暖化対策として、原子力発電の導入推進に対するFNCAの役割を認識している。また、地域の原子力安全ネットワークを確立するため、FNCAとANSNの密接な協力を支援する。放射線利用については、長期にわたって多くの分野で活動しており、FNCA加盟国の協力は重要なメカニズムである。
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ベトナム |
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原子力発電に関しては、長期的な開発に必要な全ての課題に対応しつつある。本年11月25日、国会において総議員の77.48%の同意を得て、4基4000MWe設備容量の最初の原子力発電プラントをニントゥアン省(Ninh Thuan Province)に建設する議決が承認された。最初の1基は2014年に建設開始し、2020年に運転開始を予定している。このような状況下で、IAEAの基盤整備19項目のガイダンスと合致した国の基盤整備を早急に進めなければならない。具体的な基盤としては、原子力法と規制枠組みの改正、人材育成、研究開発能力の増強などである。一週間前のことであるが、IAEAの統合原子力基盤レビュー(INIR)ミッションが、国の原子力基盤の現状を評価するために来訪した。INIRの専門家は、ベトナムの努力を高く評価している。CDMに関しては、国際共同体が、気候変動に関する共同調整機関を設置し、海水の水位上昇などの気候変動の影響を受ける国々の支援計画を策定することを提案する。
ベトナムでは、原子力利用のもうひとつ重要な分野に放射線と放射性アイソトープの利用がある。2009年には、3つのPET・サイクロトロン・センターを建設・運用開始した。放射線突然変異技術の応用として、米、大豆、トマト等の新種開発に応用されている。国内では、照射技術は、ある種の産業規模のセンターでブランチ化している。
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Dr.ヴォン・フー・タン
ベトナム原子力機構委員長
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会合風景
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(3) セッション3:FNCA活動報告
2009年度のFNCAにおける活動に関して、以下の3つの報告が行われた。
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プロジェクト活動報告と年次計画 |
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町FNCA 日本コーディネーターより、2009年度のFNCAプロジェクト(8分野11プロジェクト)の活動報告及び本年度の年次計画の提案が行われた。農業・工業分野、医療分野、研究炉利用、放射性廃棄物管理、原子力広報、原子力安全文化、及び人材養成の各分野について、最近の活動状況報告がなされた。FNCA活動の2009年度年次計画及び2010年度の会合予定は、全会一致で承認された。
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基盤整備パネル会合 |
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本年7月に実施した「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」第1回会合の成果について、同会合議長の伊藤原子力委員より報告が行われた。パネル会合において、従来のテキストやセミナーでは得られない、原子力発電導入初期の成功や失敗事例を含む実際の経験に基づく教訓がメンバー国の間で共有され、有意義であったことが報告された。
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CDMケーススタディ結果 |
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本年4月から実施したCDMケーススタディの結果について横尾内閣府参事官補佐が報告を行った。ケーススタディにはインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイが参加し、各国状況に応じて適切に選択した前提条件を用いて、100万kW級原子力発電所を1基建設した場合のCO2削減量及び経済性評価を行った。
各国間でばらつきはあるものの、総体的に原子力発電によって大幅なCO2放出量の削減が可能なことを改めて示した。また、炭素クレジットの価格によってはCDMによる大きな経済性の向上が期待できることを示唆した。また、排出量削減を達成するために国際協力を推進するよう設計された「クレジットメカニズム」(CDMを含む)に原子力発電を含めることが効果的であることが提案されるとともに、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下の会合や他の国際交渉において努力の必要性が指摘された。
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町 末男
FNCA日本コーディネーター
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伊藤 隆彦
原子力委員会委員
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横尾 健
内閣府政策統括官(科学技術政策・
イノベーション担当)付参事官
(原子力担当)付 参事官補佐
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(4) セッション4:円卓討議1「原子力エネルギー利用促進のためのさらなる協力」
近藤委員長からリードスピーチが行われ、以下の2点が論点として提案された。
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原子力発電の基盤整備に関して、FNCAとしての各国への支援や基盤整備 |
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パネルの効果的運用、原子力安全、核セキュリティ、及び核不拡散/保障措置(3S)の確保のために各国が取り組むべき協力の強化、特に、地域に固有の課題である地震や津波等に対する安全確保対策について知見共有、及び核セキュリティと核不拡散/保障措置を確保するための基盤の整備や強化のためにいかに人材育成や技術基盤の整備を行うべきか。
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CDMケーススタディ結果を踏まえて、UNFCCC枠組の下の2013年以降の国際的枠組みにおいて、CDMを含むクレジットメカニズムに原子力発電を含めるために、FNCAとしてどのように取組むべきか。 |
議論の結果、地震、津波及び火山噴火等の自然災害に対する知見共有の進め方、及び各国それぞれの強みを生かしたFNCA活動強化の進め方について、その具体化に向けた検討を2010年3月に予定されている第11回コーディネーター会合で討議することとなった。また、原子力発電をクレジットメカニズムに含めるための活動については、各国が自国内(特に環境行政部門)及び国際社会における議論に向けて協力して準備をすすめることとした。
(5) セッション5:円卓討議2「放射線・アイソトープ応用促進のためのさらなる協力」
日本・町コーディネーターからリードスピーチが行われ、日本以外のメンバー国による費用面も含めた積極的なプロジェクト主導、モリブデン99供給不足や半導体製造プロセスでの中性子ドーピング施設不足を解消するための研究炉共同利用、原子力発電のための人材養成強化、工業や農業分野で実用化推進のためのフォーラムの設置等が提案された。
議論の結果、医療用アイソトープ供給や半導体製造への活用を含む研究炉活用協力をメンバー国のネットワークを通して最適な形で行うこと、大型施設の国際共用促進を検討すること、FNCA等で開発した原子力技術をどのように実用化していくかについて情報や経験を共有する実用化促進フォーラム(フィリピン提案)や関連する業界団体や企業と合同で行うビジネスフォーラム(マレーシア提案)の開催等が提案された。中国から、現在建設中の60MW研究炉が来年臨界になるのに合わせてセミナーを開催したいとの提案や、秦山CANDU炉で製造したコバルト60供給計画の紹介等もあった。
(6) セッション6:決議及び会合サマリに関する討議
梶田審議官より、今回大臣級会合の決議案及び会合サマリ案の説明が行われ、内容につき議論が行われた。その結果、一般事項および非発電分野の7項目については10カ国全部により、また発電関連の2項目(第8、9項)についてはオーストラリアを除く9カ国によって活動をするという内容で採択された。 また、会合サマリについても、議論の結果を反映して承認された。
(7) セッション7:閉会セッション
議長であるベトナムのヴォン・フー・タン原子力機構(VAEI)委員長より、セッション6で採択された決議および会合サマリについて確認がなされた。
次に、中国のチェン・キウファ国家原子能機構(CAEA)主任より、次回開催国挨拶が行われ、来年11月か12月に第11回FNCA大臣級会合を中国で開催予定であることを述べるともに各国に積極的な参加を要請した。
最後に近藤委員長より閉会挨拶が行われた。
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