FNCA


FNCA FNCA Meeting

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大臣級会合

第24回
概要
プログラム
参加者リスト
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第23回
概要
プログラム
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第22回
概要
プログラム
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カントリーレポート(英文)

第21回
概要
プログラム
参加者リスト
共同コミュニケ(PDF)
カントリーレポート(英文)

第20回
概要
プログラム
参加者リスト
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カントリーレポート(英文)

第19回
概要
プログラム
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カントリーレポート(英文)

第18回
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プログラム
参加者リスト
共同コミュニケ(PDF)
カントリーレポート(英文)

第17回
概要
プログラム
参加者リスト
共同コミュニケ(PDF)
カントリーレポート(英文)

第16回
概要
プログラム
参加者リスト
共同コミュニケ(PDF)
カントリーレポート(英文)

第15回
概要
プログラム
参加者リスト
決議
カントリーレポート(英文)

第14回
概要
プログラム
参加者リスト
決議

第13回
概要
プログラム
参加者リスト
決議
カントリーレポート(英文)

第12回
概要
プログラム
参加者リスト
決議
会合サマリー

第11回
概要
プログラム
参加者リスト
決議
会合サマリー

第10回
概要
プログラム
参加者リスト
決議
会合サマリー

第9回
概要
プログラム
参加者リスト
要約(決議)

第8回
概要
プログラム
参加者リスト
要約(決議)
共同コミュ二ケ

第7回
概要
プログラム
参加者リスト
要約(決議)

第6回
概要
プログラム
参加者リスト
要約

第5回
プログラム
参加者リスト
要約
報告
ポスター展示

第4回
概要
プログラム
参加者リスト(英文)
要約
報告
Summary Report (PDF)

第3回
概要
プログラム
参加者リスト
要約
ハイライト

第2回
概要
プログラム
参加者リスト
要約

第1回
概要
共同コミュ二ケ


アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
第11回大臣級会合
概要

2010年11月18日(木)、中国・北京(釣魚台国賓館)



 内閣府・原子力委員会の主催により、第11回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合が2010年11月18日(木)、中国・北京(釣魚台国賓館)において開催された。FNCA参加国であるオーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの他、今回より新しく加入したカザフスタン、モンゴルの全12ヵ国から大臣級代表(大臣2ヵ国、副大臣4ヵ国、原子力行政機関長他)が一堂に会し、原子力分野での国際協力に関し幅広い観点から討議を行った。(プログラム)(参加者リスト

 開会セッションでは、本会合の共同議長である和田内閣府科学技術政策担当大臣政務官が開会挨拶を行った。今回からカザフスタン、モンゴルを新たな加盟国として招待し、より活発な意見交換が行われた。主な各国の意見、討議結果、採択された決議のポイントを以下に示す。

(1)  各国の意見、討議結果
 原子力発電所の建設計画を持つ国より、人材養成支援、運転・製造における技術の地元企業対応に関する情報提供の要望があった。また、今後の原子力発電の商業利用促進のため、既に原子力発電を所有する中国、日本、韓国のこれまでの国民理解増進に向けた活動の知見の共有について強く要請された。中国、日本、韓国からは、建設のための基盤整備、人材養成等への支援の用意があることについて表明があった。
 さらに、放射線の活用推進への更なる協力、原子力技術の商業利用促進方法についての議論や、原子力発電が低炭素社会へ貢献する手段の1つであることを国際社会へ提言していくことの確認などがなされた。
 
(2)  決議のポイント
・  原子力エネルギーの平和的利用のため、原子力安全、核セキュリティ、及び核不拡散/保障措置を始めとする基盤整備にさらに注力する。
・  アジア地域の共通の利益として、新規に導入されるプラントの安全性を世界的な基準に照らして確認することの重要性を認識する。
・  研究機関で開発された原子力技術の活用促進・商業利用促進を行う。
・  温室効果ガス削減に寄与する炭素クレジットメカニズム等における原子力発電の優位性について、国際社会への呼びかけを推進する。

 なお、次回のFNCA大臣級会合は、来年日本において開催される予定である。
 以下、会合の結果概要を示す。

1. セッション1: 開会セッション

 最初に共同議長の一人である中国国家原子能機構主任Mr. CHEN Qiufa(チェン・チュウファ)よりホスト国としての歓迎の挨拶があり、この中で中国は長年にわたり原子力開発を進めてきており、原子力エネルギー、放射線利用技術のアジア地域協力の重要な枠組であるFNCAに対し積極的に参加、協力をして行くとの意向が述べられた。次に日本の和田内閣府政務官から共同議長および主催者としての挨拶があり、この中で共催国の中国への感謝と今回から正式加盟となるカザフスタン、モンゴルへの歓迎の辞が述べられた。また、原子力エネルギー利用推進が急速に高まっているアジアにおいて、特に日本、中国、韓国からの基盤整備への協力は重要であり,日本は積極的にこれを推進する旨の発言があった。続いて、今回から正式参加したカザフスタン及びモンゴルの代表から加盟承認への謝辞および挨拶があり、2国の原子力の現状とFNCA活動への期待が述べられた。
 次に、出席国代表の自己紹介、大臣級会合の準備会合として前日17日(水)に行われた上級行政官会合(SOM)の結果報告(日本・梶田内閣府大臣官房審議官)、大臣級会合のアジェンダの承認が行なわれた。


左からチェン・チュウファ中国国家原子能機構主任、和田内閣府政務官

梶田内閣府大臣官房審議官

2. セッション2: カントリーレポート

 各国の原子力発電や放射線利用に関する活動が報告された。我が国からは近藤駿介原子力委員会委員長が報告を行った。各国の報告概要は以下の通りである。

(1)  オーストラリア

ロン・ハッチングス
オーストラリア原子力科学技術機構
専務理事
 現政府には原子力発電導入の計画はない。しかし、エネルギー需要の急増に対して資源が十分ではない国々において、原子力がエネルギーミックスの中の重要な役割を担っていることを認識しており、厳格な環境保全と安全性の配慮を前提に、ウラン供給を継続する方針である。温暖化ガス放出低減の政府目標としては、再生可能エネルギーや低炭素技術の導入により2000年レベルの5%減を掲げている。2020年までに地熱や風力といった再生可能エネルギーによる発電が総発電量の1/5を占める予定である。
 放射線利用面では研究開発の重要性を強く認識しており、昨年、OPAL研究炉の中性子利用研究装置や加速器科学センター設立予算を新たに計上した。これにより、OPAL研究炉では中性子ビーム拡張計画が進行中、また、加速器科学センターでは、現行の2基に加え新たに2基の加速器建設が4年後完成を目途に進んでいる。
 FNCA活動に対しては積極的に取り組んでおり、原子力安全マネジメントシステム(SMS)を担当し、2010年2月シドニー、同10月インドネシアと2回目のワークショップを開催した。また、放射線安全・廃棄物管理、中性子放射化分析、及び人材養成の各プロジェクトに参加してきている。

(2)  バングラデシュ

デリップ・クマール・バサク
バングラデシュ科学・情報・通信
技術省審議官
 現政府は、貧困の排除と持続可能な発展にとって科学技術の発展は不可欠なものと認識し、2021年までに発電能力を20,000MWにする目標を立てており、原子力発電はこのための不可欠な選択肢と考えている。このため、政府はルプール原子力発電プロジェクト(Rooppur Nuclear Power Project)遂行のため首相を委員長とした委員会を作り、また関連組織や専門家を含む技術委員会も設置し、建設に向けての各種の検討を進めている。
 放射線利用においては、TRIGA研究炉のビーム孔装置や原子炉制御盤の改良、350キロキューリーのコバルト60線源の設置、タンデム加速器新設など研究施設の拡充を進めている。現在国内において、14のセンターで放射線医療設備が使用可能であるが、新たに2011年末までにバングラデシュ原子力委員会(BAEC)内にPET医療センターが設立される予定である。
 またBAECは原子力規制機関としての役割を担っており、原子力発電の導入を成功させるため原子力規制に関する基盤強化の重要性を認識している。現在、“バングラデシュ原子力規制法令2010”の新法をIAEAの協力を得て準備中である。
 原子力発電の導入にとって人材養成は依然として最も重要な課題であり、FNCA加盟諸国の一層の協力が必要である。このためFNCAへの要望として、発電のための人材育成の課題を大学と協力しプログラムに組み込むことや、初めて原子力発電を導入する国への人材育成のためのロードマップの準備支援の検討等を期待する。

(3)  中国

チェン・チュウファ
中国国家原子能機構主任
 中国はこれまでFNCAの8分野のプロジェクトに参加、研究炉利用、中性子放射化分析,米の品種改良等のセミナー開催や、5分野への専門家の派遣等を行い有用な成果を挙げており、今後も積極的に協力を進める方針である。多くのFNCA加盟国が原子力発電導入へ向かう中、中国はこれまでの技術蓄積を基礎にこの分野での協力を広範に進める予定であり、以下の4点の提案をしたい。

  原子力研究開発能力向上のための協力の強化:過去50年に亘り、ウラン採鉱、濃縮、燃料製造、廃棄物処理・処分等の研究開発の蓄積があり、また、2010年5月及び7月にはChina Advance Research Reactor (CARR)及びChina Experimental Fast Reactor (CEFR)の初臨界を達成した。これらの大型施設を活用し、原子力エネルギー平和利用のための協力を推進したい。
  原子力発電所建設のための協力の強化:現在、発電炉は13基10GWeが運転中、24基20GWeが建設中であり、設計、建設、運転の経験を豊富に持っており、FNCAの枠組の下での原発建設の支援を強化したい。
  社会・経済発展のための原子力技術の適用に関する協力の強化:長年に亘り原子力技術の工業、農業、医療,環境保護分野での応用を進め、原子力技術適用の体系を構築し、大きな経済効果を得ている。原子力技術の適用は目覚しい経済・社会利益をもたらすものであり、この経験を加盟国と共有し、医療、農業、放射線の技術や適用に関し、共に発展していきたい。
  原子力エネルギー利用での持続的発展に向けた人材養成:原子力エネルギー開発にとってプロフェッショナル人材の育成は最も基本的かつ不可欠な要件であり、急速な開発の下で、原子炉の設計、建設、運転、廃棄物処理・処分等の分野の人材不足解決は各国共通の課題である。強固な基礎固めのため、人材養成経験の共有化を強化したい。

(4)  インドネシア

シャムサ・アルディサスミタ
インドネシア研究技術省副大臣
 インドネシア政府は、国家経済開発にとって、研究・技術が重要な要因であるとし、今年半ばに、2010-2014年中長期開発計画の見直しを行なった。
 研究技術省は6つの優先度の高い分野に焦点を当てており、原子力科学技術は、そのうちの少なくとも3つの分野、即ち食料・農業、エネルギー、保健に強く関わっている。
 2009年末以来、原子力科学技術政策は、これまでの成果をエンドユーザーに向け市場に出すことである。多くは成功しているが、成果の全てを利用できておらず大量生産されないケースもある。これは成果とエンドユーザーとの密接な協調を促す革新的システムが必要であり、加盟国とこの活動を続けていくことで経済発展の強化や改善につながるであろう。
 原子力科学技術の電力への適用に関する調査の結果、3000人のうちの約58%が、インドネシアでの原子力発電の導入に同意している。国家エネルギー評議会は、電力として大量の原子力発電が、2020年に開始する国家エネルギー安全保障を支えるための主たる発電手段のひとつであることに殆ど合意している。現在及び今後に亘り、インドネシアにおける原子力発電プラントの建設推進については、メディア・キャンペーン、関係者の取込および地域開発をとおして行われている。また、インドネシアは、2011年に「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」第3回会合を主催する予定である。
 エネルギー分野での利用のひとつに、地熱探査のみならずその利用試験の標準的な手法として、トレーサーとしてのアイソトープ利用がある。この技術は、原油二次回収の際に多くの国営および民間企業で長きに渡って利用されている。放射線育種の分野では、稲の改良が進められ、さらに、農業省は、2010年7月に大豆の改良品種を公開している。
 保健に関する放射性アイソトープと放射性薬剤の分野では、研究技術省、保健省およびその他の利害関係者が、ガン消滅の中期計画を策定している。また、日本原子力研究開発機構との協力で、PZC(Poly Zirconium Compound)手法を用いたTc-99m(テクネチウム‐99の核異性体)製造法を成功裏に開発したことを述べておく。
 政府としては、研究成果を十分に活用することで生活の質の向上を図るために、大学、政府、国有/民間企業の3者による協力強化を図っている。
 人材養成は、依然としてFNCA加盟国の一般的課題であり、人材養成プロジェクトを最優先して進めるべきである。ANTEP (Asian Nuclear Training and Education Program)をとおして、参加するとともに、他国が必要としている施設のみならず専門性での貢献をとおして支援して行きたい。
 2012年の第13回の大臣級会合が開催できることを楽しみにしている。

(5)  日本

近藤駿介
原子力委員会委員長
 日本は過去50数年に亘り、平和利用に限定し、原子力に関わる研究開発、原子力利用を進めてきた。放射線及び放射線同位体は、科学、医療、産業と様々な分野に幅広く利用されている。商用発電炉においては、現在54基、48GWeが運転中であり、発電量全体の26%、一次エネルギー全体の10%を供給し、日本のエネルギー安全保障の増強に寄与し、地球温暖化防止の観点で重要な役割となっている。昨年の環境サミットで日本は2020年までに温室効果ガス放出量を1990年比で25%削減を目指すと宣言したが、原子力発電はこのための重要な役割を果たすものと考える。本年7月に日本政府は「新成長戦略」を策定、この中でも低炭素社会に向けて再生可能エネルギー、原子力、蓄電池等の新技術開発を推進するとしている。この目標達成のため、原子力委員会は電力事業者に対し、地震災害等により60-70%台に止まっている原子力発電所の稼働率の向上を要請している。さらに発電能力の増強も要請しており、2基が建設中、3基が設置許可審査中であり、今後10年以内にさらに9基の増設が見込まれている。併せて、使用済燃料貯蔵施設建設や高レベル廃棄物処分施設の立地選定についても促進を図っている。
 長期計画の主要なものとしては、2050年の商業化を目指した高速炉及び燃料サイクルの研究開発を促進している。また、その他の長期計画としては、核融合エネルギーや高温ガス炉研究を進めている。
 高性能蓄電池のための機能材料、二酸化炭素吸収能力の高い植物等の開発やガン治療技術開発など医療面での応用など、放射線利用の推進も環境イノベーション、生命イノベーションにとって重要な役割を果たしており、原子力委員会は、このための各種施設の建設、利用を提言している。
 多くの国が気候変動やエネルギー問題により原子力発電の計画を表明しているが、どの国においても、安全、セキュリティ及び核不拡散対策の向上に常に努力する必要がある。IAEAの標準や推奨およびコードを含む関連した国際標準を着実に実行し、原子力発電に従事する組織においては、安全文化だけでなく、原子力セキュリティ文化や不拡散文化を育んでいく必要がある。
 また、海外から日本の各種人材養成計画に容易に参加できるよう全体取り纏め機関となる「原子力人材育成ネットワーク」の設立がそろそろ行なわれる予定である。これに関連して、4月にワシントンで開催された原子力セキュリティ・サミットにおいて、原子力発電を導入する国々と、平和的で安全な原子力利用に関する日本の経験を共有するため、「核不拡散・セキュリティ総合支援センター」の設立について言及している。このセンターでは、@原子力セキュリティ、AIAEAの保障措置/核物質管理システム、B核不拡散の国際的枠組についての研修が行われる予定で、キックオフとして今月はIAEAと協力して原子力セキュリティ訓練コースの開催を予定しており、FNCA各国からの参加も歓迎している。

(6)  カザフスタン

エルラン・G・バトルベコフ
カザフスタン国立原子力研究所
第一副所長
 1991年のセミパラチンスク原爆実験場の閉鎖宣言以来、カザフスタンは原子力の平和利用に徹してきている。
 原子力関係機関としては、工業・新技術省の下に、原子力委員会(安全,核不拡散)、国立原子力センター(研究開発、教育)、カザトムプロムKAZATOMPROM(ウラン探査、採掘、燃料製造)、原子力技術パークJSC-PNT(商用技術開発)の4機関を置いている。
 ウラン資源として世界の15%の埋蔵量を有し、約28%のウランを生産し、これを基礎に、ウラン採鉱、核燃料生産から発電利用までの燃料サイクルの構築を進めている。
 原子力発電では、2020年までに最初の軽水炉を建設する計画で、5サイト(Aktau, Kostanai, Kurchatov, Balkhash, Taraz)に建設を予定している。
 原子力科学技術研究では、3基の研究用原子炉と重イオン加速器等の研究施設を有し、さらに材料試験用トカマク装置を2011年完成に向けて建設中で、各種の研究開発を進めている。
 放射能環境保全では、セミパラチンスク原爆実験場の環境影響の除去が課題で、現在、原爆実験施設の除去が殆ど終了し、9年後を目標に、跡地の90%を経済活動への土地利用に供することを目指し作業を進めつつある。
 核不拡散管理では、核不拡散条約の下に、地震波観測による核実験モニタリング等の活動を進めている。

(7)  韓国

ホン・ナムピョ
韓国教育科学技術部
原子力局局長
 韓国は原子力の新規導入国の基盤整備のため二国間及び多国間協力を進めており、二国間協力としては、現在、UAE及びヨルダンにおいて原子力研究開発、安全規制及び人材養成に関する訓練計画を提供し、また、KAERI及びKINSに所属する韓国内の各種研究機関での専門家研修の支援も行っている。多国間協力では、韓国はIAEAの原子力ネットワーク基盤整備のための特別拠出金を増額し、また、第2回FNCA基盤整備パネル会合を国内で開催した。さらに、新規導入国の規制基準、安全審査、保安検査、専門家育成訓練を支援するため総合安全規制基盤支援システムを開発した。
 放射線利用でも、FNCAは、ガン治療や加速器、PETなどを使った放射線医療の分野における国際協力に大きな役割を果たしており、放射線や放射性同位元素の適用推進について議論を深め、生活向上への寄与を図る事が重要と考える。韓国はこれまで、ベトナム、モンゴルとの協力をしてきているが、さらに他のFNCA加盟国との放射線利用分野の協力を進めたい。

(8)  マレーシア

マキシマス・ジョニティ・オンキリ
マレーシア科学技術革新省大臣
 国家の電力需要は、2015年までに約121,000GWh、2030年までに約211,000GWhに達すると見られている。現存の燃料資源であるガスおよび石炭は十分ではない。前者は偏在し枯渇が危惧され、後者は輸入である。水力も限られている。再生可能エネルギー源も限られており、太陽光は経済的でなくベース・ロードには不向きである。
 以上の制約を打開するため、2010年6月にマレー半島の長期オプションとして、原子力エネルギーを含む新国家エネルギー政策を取り入れた第10次マレーシア計画が開始され、国会において審議された。
 2010年7月に、原子力開発の指針を用意するため、国家原子力政策が閣議で承認された。2020年以降に発電の燃料オプションのひとつとして、原子力の利用に備えることが強調された。
 非エネルギー利用については、産業分野・ヘルスケア・農業分野および資源管理と環境保護における核放射線技術の革新と応用が、国の経済競争力、社会福祉、食料・水の安全保障、そして持続可能な開発に向けて一層拡大すると期待される。
 マレーシアは、国家発展に向けた貢献で、原子力技術が重要な役割を演ずるものと信じている。2010年10月25日に開始された経済変革計画(ETP: Economic Transformation Program)の第2部分に採用されている新経済モデルの下に「131 Entry Point Project」と称する計画のひとつとして、原子力開発が示されている。
 以上のマイルストーンを達成するため、2011年を目途に、マレーシアは国家原子力基盤開発計画(NPIDP: national Nuclear Power Infrastructure Development Plan)を策定している。適切な二国間協力やFNCAのような多国間協力の合意のみならずIAEAから、専門家の包括的レビューを受ける予定である。
 喫緊な事として、原子力に対するPA(Public Acceptance)を確実にすることがある。マレーシアは、継続して第4回目のPINEセミナー(Seminar on Public Information on Nuclear Energy)を、2010年末に南のJohorで開催する予定である。
 マレーシアは、FNCAの多国間の枠組みの下で、研究炉技術と利用、放射線育種、サイクロトロン・PET-CT、照射プロセス、人材養成と広報プログラム、そして安全管理といった多くのプロジェクトから便益を得てきた。
 マレーシアは、FNCAの将来活動と考えられる次の構想を提案したい。

  ビジネス・フォーラム:来年の第12回大臣級会合と並行して東京で開催
  原子力広報プログラム:政治家や地域のリーダー等によるメンバー国の原子力発電プラント等の訪問
  協力推進:燃料サイクルと廃棄物管理に関して多国間協力の可能性について地域議論(ASEAN+3)の継続等、また、マレーシアは、日本の文科省・日本原子力研究開発機構・NuHRDECが推進する国際人材育成プログラムを支援し、R&Dと訓練施設の共有、R&Dにおける協力等の強化
  原子力発電プラントを含めた原子力技術の社会経済的効果を評価する地域プロジェクトの設立

(9)  モンゴル

ソナム・エンフバット
原子力エネルギー庁長官
 モンゴル政府は原子力平和利用のための法整備を進めており、2009年8月に原子力エネルギー法を施行、原子力平和利用開発での主導国の一つとなるべく、放射性物質資源開発を進めて行くこととした。同年1月には総理大臣の下に原子力規制のための原子力エネルギー庁を設立した。モンゴルには豊富なウラン資源埋蔵量があり、政府は、将来のエネルギー需要増加に対応するため、「モンゴルの放射性金属類及び原子力エネルギー開発に関する政策」を承認した。これにより、ウラン資源の探査、採掘、輸出に関する広範な国際協力を目指している。国際市場でウラン需要増加が見込まれる中で、モンゴルは将来の原子力エネルギー利用のため、「ミレニアム開発目標に向けた総合国家政策」の下に、ウラン資源の採掘、処理、輸出に向けての種々の施策を進めている。
 非エネルギー利用に関しては、工業生産、プロセス制御、非破壊試験資源探索等での活用で大きな経済効果を得ている。農業分野においては育種、土地改良等の有益な応用があり、医療面でもガン治療などの技術開発が進み、また、環境保護や水管理の分野でも放射線利用が重要になりつつある。
 国際協力では、ロシア及びフランス政府との二国間協定を締結し、ロシア(ROSATOM)、日本(METI)、インド、フランス(AREVA)、中国(CNNC)、米国との協力覚書交換を行なっている。
 FNCA活動に関しては、モンゴルは以下の5分野への参加を表明する。

  工業、環境応用の分野:品種改良、バイオ肥料、電子加速器利用
  健康応用の分野:放射線治療プロジェクト、モンゴルは今年PACT計画に参加
  原子力安全強化の分野:放射性安全強化、放射性廃棄物管理プロジェクト
  原子力基盤整備の分野:人材養成プロジェクト、広報プロジェクト
  新たに日本の文科省が開始する「国際原子力人材育成イニシアティブ」への参加

 上記の新計画は新規導入国の基盤整備に非常に有益と考えている。
 原子力エネルギー利用人材育成データベース、及びANTEP(アジア原子力訓練・教育プログラム)はFNCAに参加し効率的、効果的に成果が得られる道であると期待している。

(10)  フィリピン

マリオ・G・モンテジョ
フィリピン科学技術省大臣
 政府は「フィリップイノベーション (Filipinnovation)」という国家開発方針を策定して新たな政策を進め、科学技術分野での産学官協力を推進している。この下で科学技術庁(DOST)は研究所、大学等の科学技術研究成果の商用化に向け、資金援助、技術移転促進等の総合的な施策を進め成果を挙げている。原子力技術分野でも成果が出ており、FNCA協力がアジア地域の原子力技術研究成果の商用化に寄与する事を期待する。
 フィリピンでは、先週、放射線育種及びバイオ肥料に関するFNCAワークショップ、原子力技術の商用化の技術移転に関するFNCA会合を開催したが、この成果が発端になり同種の会合がさらに進展する事を期待する。
 フィリピン政府は原子力をエネルギーミックスに加える判断をまだしていないが、エネルギー省(DOE)は原子力導入フィージビリティー調査の予算を要求しており、また、エネルギー庁と科学技術庁は、2009年に長期計画を検討する原子力エネルギーコアグループ設立の共同省令を出し、このコアグループは、法/規制枠組、人材養成、広報、立地、BNPP関連課題についての検討を行ってきた。
 科学技術庁(DOST)は、現在、フィリピン原子力研究所(PNRI)を経て出された独立した規制機関設立案の第15議会通過を待っている所であり、2010年2月には上院で追加議定書が批准され核不拡散対応が強化されている。また、外務省、大統領府と協力し、原子力安全条約、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理に関する安全条約の批准に向け作業を進めている。
 原子力発電計画を支える人材養成に向けて、PNRI原子力訓練センターでは研究所、電力会社、エネルギー省、大学の研究者、技術者を対象に原子力基礎講座を実施し、さらにこの研修コースをIAEA、韓国、日本の研修につなげている。人材養成では、特に日本原子力研究開発機構との協力が得られていることに言及しておきたい。
 原子力広報を進め、一般公衆による原子力発電受け入れの判断を導く事もコアグループの重要な活動であり、FNCAの広報プロジェクトには積極的に参加したい。2009年には、国内の原子力週間(AEW)の行事に合わせて、プロジェクトリーダー会合を開催し、この会合の一部として、PNRIは、大学、メデイア、政府、NGO,FNCA代表など100人が参加するセミナーを開催した。コアグループは、原子力発電に関わる各方面の関係者を対象に広報活動を更に展開する予定である。
 FNCAは、アジア地域協力の効果的な枠組であり、活動の強化を期待する。

(11)  タイ

ゴンサク・ヨドマニタイ
科学技術省顧問
 タイは、長年に渡り、FNCA活動に協力し、関係者の能力強化や技術的専門性の改善に役立ててきた。これまで、FNCAのすべての活動に参加するだけでなくバイオ肥料プロジェクトのワークショップを含むFNCA活動を主導するなどFNCAに貢献してきた。
 FNCA "研究炉基盤技術プロジェクト"での計算コードCOOLOD-N2およびEUREKA2/RRを用いた研究炉安全解析技術は、研究炉運転スタッフに継承され、運転訓練等に活用される予定である。タイは、原子力発電への技術支援の役割も演じるものとして、研究炉基盤技術プロジェクトを強力に支援する。
 タイにおけるバイオ肥料プロジェクトの成功が、この分野を新段階に導いている。即ち、タイのみならずアジアにおける環境に優しい農業としてバイオ肥料の利用の拡大を促進している。
 また、原子力エネルギーに関する知識と正しい理解を広めるためいくつかの情報公開活動を担ってきた。ここで、報告すべきは民間部門も情報公開活動を支援し参加するようになったことである。
 原子力安全文化に関するFNCA枠組みの下で、加盟国の間でのピア・レビューや情報交換をとおして、有意義な実践を経験している。
 タイ政府が原子力発電を導入しようとして以来、その導入を遂行するに十分な人数と能力を伴った適切な人材を育成するため、人的資源に対する対応は、原子力発電プログラムにおける必須の課題と考えている。
 原子力発電開発に関しては、5,000MWの原子力発電とそのインフラ確立計画(NPIEP)を含む国家電力開発計画(PDP 2010)の推進に向けて進捗した。FNCAの原子力発電に関する検討パネルは、原子力発電を導入しようとしているFNCA加盟国間での情報交換や専門性移転を刺激することになり、極めて有効である。今年末にIAEAの支援により自己評価の報告書をまとめ、その報告書を国家エネルギー政策評議会へ提出する予定である。2011年早々に、内閣は原子力発電プロジェクトに着手するかどうかを判断することになる。

(12)  ベトナム

レ・ディン・ティエン
ベトナム科学技術省副大臣
 原子力の平和的なエネルギー及び非エネルギー利用が,社会・経済発展に重要であるとの認識の下に、政府は、2010年7月24日、「2020年に至る原子力平和利用開発基本計画」を制定し、持続可能な原子力エネルギー開発のための開発ステップと優先順位を明確化した。
 原子力発電については、2009年11月25日に最初の原発建設への投資の方針を議会で承認し、この原発建設のために、2010年5月、ニントゥアン(Ninh Thuan)原子力発電所に対する国の運営委員会NEPIOが設立された。2010年7月には、総理大臣により「2030年に至る原子力発電開発長期計画」が承認され、2020年に最初の原子力発電所1,000MWを運転開始し、総発電量の1.3%、2025年までに8,000MW、総発電量の7%、2030年までに15-16,000MW、総発電量の10.3%を原子力発電とする目標を立てた。長期計画では、また、5つの省で8カ所の建設サイトを定めている。この中の第1期及び第2期建設計画は、ロシア及び日本との協力で進める事が決定された。
 放射線利用の分野では、原子力平和利用長期戦略の下に、「2020年に至る農業における電離放射能利用開発基本計画」「2020年に至る放射線モニタリング網開発基本計画」が承認され、さらに、医療、工業、資源・環境分野での原子力利用長期計画が準備中で、年内には総理大臣の承認が得られる見通しである。昨年来、放射線及びRI利用も進捗しており、Co-60や電子線での照射プロジェクト、ダラトの高度技術原子力利用プロジェクト、複数の病院でのPET/サイクロトロンプロジェクト等が進んでいる。
 技術基盤開発では、ベトナム原子力研究所の予算増額を含む研究開発強化に向けた基本計画が政府に提出され年内の承認を待っている。また、原子力エネルギー分野の国の運営や原子力安全・セキュリティ強化に関わる基本計画も年内に承認される。
 人材養成も極めて重要な課題であり、政府も特に力を注いでいる。2010年8月には「人材養成計画」が総理大臣の承認を受け、教育方針、教育基盤を整備し、2015年まで毎年250人の学生を育成し、2020年に向けての原子力発電、国の管理、研究開発に必要な人材確保を行うこととしている。このため、国内6機関が指定され、原子力人材養成のための教育訓練予算が大幅に増額された。
 FNCAの枠組で進められている協力は、IAEAやRCA協力と並び、ベトナムの原子力研究開発のなかに深く組み込まれており、大きな貢献をしている。今後、さらにこの国際協力の進展を期待するとともに、積極的に参加、協力して行くつもりである。

3. セッション3: FNCA活動報告

 2010年度のFNCAにおける活動に関して、以下の2つの報告が行われた。

(1)  プロジェクト活動報告と年次計画
 町FNCA 日本コーディネーターより、2010年度のFNCAプロジェクトの活動報告及び本年度の年次計画の提案が行われた。農業・工業分野、医療分野、研究炉利用、放射性廃棄物管理、原子力広報、原子力安全文化、及び人材養成の各分野について、最近の活動状況報告がなされた。FNCA活動の2010年度年次計画及び2011年度の会合予定は、全会一致で承認された。
 
(2)  基盤整備パネル会合
 昨年7月及び本年7月に実施した「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」の第1回及び第2回会合の成果について、尾本原子力委員より報告が行われた。第1回会合での検討に基づいて、第2回会合では検討項目を、プロジェクト管理、地元企業の参加、研究機関の役割、燃料サイクルと廃棄物、の4項目に絞って検討を進め、この結果、原子力発電先進国の実際の経験に基づく教訓がメンバー国の間で共有されるとともに、今後の課題が抽出され、これらの結果に基づいて第3回会合を持つ予定であることが報告された。
 
町 末男 FNCA日本コーディネーター 尾本 彰 原子力委員会委員

4. セッション4: 円卓討議1「原子力エネルギー利用促進のためのさらなる協力」

 尾本原子力委員及びフェン・イー中国核能行業協会副事務局長よりリードスピーチが行われ、それぞれ以下の論点が提案された。

(1)  尾本原子力委員
  強固な基盤整備構築のための効果的な協力:
 原子力発電において、安全、セキュリティ、保障措置及び持続可能性を確保する 上では、既に原子力発電をしている諸国の運転経験と教訓を共有する事が最も効果的であり、その項目としては、技術移転、地元企業対応、人材養成、プロジェクト管理、燃料供給と廃棄物管理、原子力安全文化等がある。
  いかに、安全、セキュリティ、核不拡散の確保を図るか:
 運転経験や設計手法の共有、如何に自然災害に強い設計とするか。
  低炭素経済に対する原子力利用の影響力を如何に高めるか:
 CDM/JI等における原子力の優位性の提言、石炭火力の高効率化等。
  地域協力による独自の価値の向上:
 研究炉共同利用、燃料その他の安定供給、安全基準策定の情報交換等。
 
(2)  フェン・イー副事務局長
  科学的な資源配置と合理的な計画立案:原子力発電は多くの資金と時間を要するプロジェクトであり、エネルギー需給を十分考慮し、経済の発展に見合った適正で合理的な資源配分を行う必要がある。
  相互に利益と関心のある分野での協力推進:加盟国には、原子力利用経験に富む、資源に富む、研究開発成果に富むなどそれぞれ特徴があり、相互の優れた所をもって支援し合うことが重要。中国は、特に原子炉燃料製造についての豊富な経験がある。
  バランスの良い開発と持続的な進展:原子力発電の便益と廃棄物管理や環境保護など負の影響要素を良くバランスさせ、持続的な進展を図る必要がある。中国は多くの経験があり、これを提供したい。
  人的能力開発と多面的な準備:原子力は技術集約的な産業であり、高度の専門的人材が不可欠である。このため、中国では大学教育やオンザジョブ訓練など多面的な方法を採用し、高度で大量の人材養成を図っている。

 議論の結果、尾本原子力委員の提言に加え、立地、許認可、CDM対応、現地化、安全・セキュリティ・核不拡散、などの今回の議論で出された論点も含め、次回の基盤整備パネルで検討を進める事になった。
 

フェン・イー 中国核能行業協会副事務局長

5. セッション5: 円卓討議2「放射線・アイソトープ応用促進のためのさらなる協力」

 町コーディネーター及びモハメド・ノール・モハメド・ユナスマレーシア原子力庁副長官によるリードスピーチがあり、以下のような論点が提案された。

(1)  町コーディネーター
  放射線利用に関する6プロジェクト:農業(育種と肥料)2件、医療(放射線治療、検査)2件、工業(天然ポリマー)、環境(海洋汚染探査)を推進、プロジェクト構築の条件を考慮
  社会・経済へのインパクト:最終利用者との連携強化、経験・知識の共有
  商用化に向けての地域協力の役割:経験・知識の共有、共同研究、人材養成、施設利用
  第10回会合での提言のフォローアップ:研究炉利用・RI供給ネットワーク、商業化への経験共有
 
(2)  モハメド・ノール・モハメド・ユナス マレーシア原子力庁副長官
  エネルギー利用の基盤整備に当り、放射線利用技術と原子力発電技術のシナジーを図る
  研究炉利用技術からは、直接的な成果が期待できる
  開発技術の商用化では、成功例の共有が参考になる
  健康向上へのニーズ対応

 以上のまとめをベースに、原子力技術応用の成功例の情報共有、商用化への支援策、人材養成における研究炉利用、研究炉・RI供給ネットワークの推進等について議論が行われ、提言を今後のFNCA活動に生かしていく事とした。
 

モハメド・ノール・モハメド・ユナス マレーシア原子力庁副長官

6. セッション6: 決議及び会合サマリーに関する討議

 近藤委員長より、今回の大臣級会合の決議案及び会合サマリー案の説明があり、内容につき議論が行われた。議論では基本的な内容変更を要求するものはなく主に文章表現に関わる指摘であり、これらの指摘を反映して、決議及び会合サマリーともに採択された。

7. セッション7: 閉会セッション

 近藤委員長より、セッション6で採択された決議及び会合サマリーについて確認がなされた。また、次回の大臣級会合は、2011年に東京にて開催する事が紹介され、積極的な参加が要請された。
 最後に、議長のリュウ・ヨンダ中国国家原子能機構国際協力部長より閉会の挨拶が行われた。


リュウ・ヨンダ 中国国家原子能機構国際協力部長



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